音声配信、時間帯で変わるニーズ コンテンツのメリハリ必要
読み解き 今コレ!アプリ フラー最高マーケティング責任者 杉山信弘氏

コラム(ビジネス)
2020/9/23付
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NIKKEI MJ

人工知能(AI)を内蔵したスマートスピーカーや高品質なワイヤレスイヤホンの普及が進み、人々の耳が常にスマートデバイスと「接続」できるようになった。ハードが充実すれば、音声や音楽の配信サービスなどソフトを提供する事業者も増え「耳の空き時間」争奪戦の様相だ。

有力企業の一角を占めるのがVoicy(ボイシー、東京・渋谷)。お笑い芸人で絵本作家としても活躍する西野亮廣さんなど、ネットの世界で影響力の大きいインフルエンサーのコンテンツを多数そろえる。このほど、有料会員向けに限定の音声配信を始めた。ニュース解説や著名人の番組で、無料では聞けない裏話などを聞くことができる。

発信者を審査制にしているボイシーに対して、誰でも無料でラジオ局のように音声配信ができるネットラジオアプリが「stand.fm」だ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛で自宅にいる時間が増え、発信者は急増している。8月に5億円を資金調達。音声配信者が発信するコンテンツの再生時間数などに応じた収益還元の仕組みを整備するほか、エンジニアの採用に力を入れる。

いずれも、ラジオ局の番組を横断して聴くことができるネットラジオ「radiko(ラジコ)」と比較すると、ユーザー数は10分の1程度ではあるが、確実に裾野が広がっている。他にもSpoon(スプーン)やRadiotalk(ラジオトーク)といったサービスがしのぎを削っている。

市場が拡大しているこの分野だが、フラー(千葉県柏市)が手がけるアプリ分析ツール「AppApe(アップエイプ)」によると、同種のサービスでもボイシーとスプーンで、視聴時間帯が大きく異なることがわかった。

ボイシーでは午前7時台に視聴者数が急上昇し、午前10時台までは高い水準を維持している。その後は一度減少し、午後6~10時のいわゆるゴールデンタイムに緩やかに増加するが、朝の放送時間には及ばない。つまり「朝型」だ。これに対しスプーンは午前中が振るわず、午後1時ごろから緩やかに上昇し、午前0時台が視聴者数のピークとなる。こちらは「夜型」と言える。

なぜ、このような違いが生まれるのだろうか。ボイシーは発信者が審査され、先ほどの西野さんや、人気ブロガーのはあちゅうさんなど主に著名人が実名配信している。ビジネスやカルチャーなどについて発信する人が多く、内容は実践的なものが中心だ。著名人による役に立つ情報と言ったところか。

一方、スプーンは一般の匿名配信に加え、動画アプリの「ニコニコ生放送」などで音楽配信をしていた歌手などが中心だ。内容も弾き語りやカラオケ、小説の朗読など、癒やし系のコンテンツが多い。元気な午前中はボイシーのような実学的なコンテンツがうけ、日中の疲れが出る夜はスプーンのような癒やしを得られるコンテンツが求められているのだろう。音声配信が乱立する中で、視聴者のマインドに合わせて、コンテンツに特徴とメリハリを持たせたサービスが勝ち抜いていくのかもしれない。

[日経MJ2020年9月23日付]

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