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食品冷凍の新常識 卵・キノコ・アサリ…うまみ増す

三浦秀行撮影

多忙な時間をやりくりするうえで、食品の冷凍保存は欠かせない。食材を長持ちさせるだけでなく、おいしさアップや料理の時短にも役立つ冷凍術を教えてもらった。

冷凍といえば、まとめ買いした食品や、たくさん作った料理を保存するのが目的の人が多いだろう。しかし、冷凍のよさはそれだけではない。東洋大学食環境科学部准教授の露久保美夏さんは、「冷凍することでうまみを引き出せる食材がある。新食感の料理をつくれたり、調理の時短につながったりする」と話す。

生卵を殻ごと 濃厚な味わい

たとえば、卵。生卵を密閉式の保存袋や容器に入れ、殻ごと冷凍してみよう。「凍らせると卵黄のたんぱく質は押しかためられたような状態になり、濃度が増す。解凍後も元に戻らないので、濃厚な味わいになる」と露久保さん。

流水に当てると、殻は簡単にむける。白身は白濁してかたまり、黄身が透けて見える状態だ。白身がとけ始めないうちに衣をつけ、天ぷらにする。揚げ時間を調整し、黄身を半熟のままとろっと仕上げるのがポイントだ。

「自然解凍した後、少し水気を切って、卵かけご飯にするのもおすすめ」と話すのはニチレイフーズ研究開発部の石崎雄一さん。ねっとりと濃厚な黄身がご飯にからむTKG(卵かけご飯)に、病みつきになるかもしれない。

キノコも凍らせてから調理するとうまみが増す。冷凍で細胞が壊れると、加熱したときにうまみ成分を作り出す酵素が働きやすくなるからだ。グアニル酸が増え、栄養価も高まる。

「シイタケやシメジ、エリンギなどを食べやすい大きさに切り、ミックスキノコとして冷凍しておくと便利」と露久保さん。凍ったまま、汁物や炒めものに使えて重宝する。

露久保さんは砂抜きしたアサリを、水にひたして凍らせる方法もすすめる。水ごと冷凍するのは、貝の口の隙間から空気が入ることで、身が酸化するのを防ぐためだ。凍ったアサリの身は細胞が壊れて、うまみ成分が溶け出しやすい。凍った水ごと味噌汁などの汁物に入れると、うまみたっぷりの貝のエキスがまるごと味わえる。

水分多い食品 新食感楽しむ

水分が多い食品は冷凍に向かないといわれてきた。解凍すると水分が流れ出て、食感が変わってしまうからだ。しかし、その変化を逆手にとって新食感を楽しむ手もある。

その一例がこんにゃくだ。ひと口大に切って冷凍したら、湯をかけて解凍する。水分を絞るとスポンジのようになり、味がしみこみやすくなる。下味を付けて唐揚げにすれば、かみごたえたっぷりで味わい深いひと品が完成する。

「豆腐の冷凍もいい」と石崎さん。解凍すると水が出てスカスカの状態だ。「軽く水を絞って、好みの調味料で味付けすると、鶏肉のような味わいになる」。おかずがあと一品ほしいときに役立ちそうな簡単料理だ。

ホウレン草などの葉物野菜はゆでて冷凍するのがいいといわれているが、忙しいときは生のまま凍らせてもいい。「ホウレン草に含まれるビタミンなどの栄養素は、冷凍では壊れにくい」(石崎さん)

スープや煮込みなどに使う野菜も切って、冷凍しておくと便利だ。野菜はかたい細胞壁に覆われており、生のままでは栄養素を効率的に吸収できない。冷凍で細胞壁が壊れると、栄養素がスープのなかに流れて溶け込み、体に吸収されやすくなる。野菜にも味が染み込みやすくなり、一石二鳥だ。

時短調理にも役立つ。冷凍したトマトは水をちょっとかけるだけで皮がつるりとむけ、湯むきの手間が省ける。魚はしょうゆやみりんにつけて冷凍すると、解凍してから下味をつけるより調理時間が短縮できる。

薄切りのキュウリは解凍して水気を絞る。すると、塩もみ後と同じような状態になり、「すぐに酢の物などに使える」(露久保さん)。

「タマネギのみじん切りを冷凍しておくのもおすすめ」(石崎さん)。細胞が壊れて糖分が溶け出しやすくなる。短時間で甘くなるため、炒める時間の短縮になる。

食材を冷凍するときは小分けにしたり、薄く切ったりするなどし、早く凍る工夫をしよう。約1カ月をメドに食べ切るようにしたい。普段冷凍しない食材も、冷凍の仕方や使い方で新発見がある。ぜひ試してみよう。

(ライター 土井 ゆう子)

[NIKKEIプラス1 2020年9月19日付]

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