シニア起業家への投資
新風シリコンバレー SOZOベンチャーズ創業者 フィル・ウィックハム氏

2020/9/8付
保存
共有
印刷
その他

ベンチャーキャピタリストのアラン・パトリコフ氏をご存じだろうか。ひょっとすると世界最大のグローバルPEファンドの一つ、APAX Partners(彼の名前の頭文字)の創業者としての顔が有名かもしれない。

ベンチャーキャピタリスト教育機関のカウフマンフェローズの会長。データ解析やフィンテック、クラウドなどのIT(情報技術)のスタートアップに投資するSOZOベンチャーズを2011年に設立。

ベンチャーキャピタリスト教育機関のカウフマンフェローズの会長。データ解析やフィンテック、クラウドなどのIT(情報技術)のスタートアップに投資するSOZOベンチャーズを2011年に設立。

彼は米アップルや米AOLの初期の投資家としても知られ、ベンチャーキャピタリストとしても有名だ。彼は、よりベンチャー投資に集中するためにAPAXを去り、ベンチャーキャピタルであるGreycroft Partnersを創業した。そんな彼がつい先日、新しいファンド「Primetime Partners」を立ち上げた。彼のバイタリティーには驚かされるばかりだ。

このファンドは米国の高齢化社会に向けたプラットフォームや商品・サービスを提供する企業だけでなく、高年齢層の起業家へ投資していく。この領域は今まで見落とされてきた領域ではあるが、彼は「シルバー世代の襲来」があるだろうと予想している。

年配の方々は、ネットで買い物をしないし、オンラインを利用するようにはならないと言われてきていたが、このコロナ禍、それが大きく変化してきている。コロナは高年齢層への影響も大きいため、外出を控えている高齢者もオンラインに向かっている。

すでに、外出禁止令が厳しかった中国では、ウィーチャットでコミュニケーションを取り、オンラインのみでの買い物を強いられたことで高年齢層の利用が一層進んだ事例もある。世界のどの国よりもコロナ禍が深刻な米国でもEC化がより一層進んでいくだろう。

おそらく若年齢層の人々が気づかない高年齢層向けのニーズやサービスを思いつくのは、同じ高年齢層のアントレプレナーかもしれない。もう一度、自分たちで何か世の中のためにやってみたいと思う高齢者のアントレプレナーが登場してもおかしくはない。

積み重ねた経験もあり、何度も起業するシリアルアントレプレナーがいるかもしれない。米マイクロソフトを引退したビル・ゲイツ氏のように新たな分野で活躍する起業家出身者も多いが、ゲイツ氏のように資産が莫大でない限り、自分自身ではやりきれない。

引退後、再度、世の中のために何かしたいという潜在起業家層は厚いだろう。今までVCから支援を受けにくい領域のビジネスに投資するというのは、実にパトリコフ氏らしい発想だ。

パトリコフ氏は、ベンチャーキャピタリスト(VC)業界の支援も続けており、VCの英才教育機関Kauffman Fellowsの初期の最大の支援者でもある。昔は彼の話をよく聞く機会もあった。若い世代への教育に熱心だ。最近、彼がテレビで話す姿を見る機会があったが、85歳とは思えないシャープな受け答えで、現役感が全く衰えていない。

高齢化社会が進む日本にも、刺激になるトピックではないか。自分も比較的若い世代が活躍するVC業界で、ベテランの領域に入ったと思っていたが、どうやらまだまだのようである。

[日経産業新聞2020年9月8日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]