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エピックVS.アップル 課金バトル 仮想空間の主導権争いが激化

奔流eビジネス(アジャイルメディア・ネットワークアンバサダー 徳力基彦氏)

NIKKEI MJ

人気ゲーム「フォートナイト」を運営する米エピックゲームズが米アップルに「宣戦布告」をしたことが話題になっている。フォートナイトはバトルロイヤル型のゲームで、世界に3億5000万人以上の登録者がいる。

アップルのCMになぞらえアップストアを批判する動画を公開した(エピックゲームズの公式ツイッター)

エピック社はフォートナイトに独自の課金システムを導入した。これが規約に違反したとして、アップル側がスマートフォン「iPhone」などで使うアプリを販売する「アップストア」からフォートナイトを削除。エピック社はアップルが独占的な地位を乱用し、反トラスト法(独占禁止法)に抵触しているとして、是正を求める訴えを起こした。

フォートナイトを利用したことがない人にとっては「たかがゲームのことでなぜ、こんなに大きな論争が巻き起こるのか」と感じるかもしれない。ただ今回の論争は、今後の仮想空間の主導権争いとみることもできる。

フォートナイトは人気歌手の米津玄師がオンラインライブを開催したように、仮想空間のプラットフォームとしても注目されている。パソコンやゲーム端末はもちろん、タブレット端末やスマホでもプレーできる点が最大の特徴だ。そのため、それぞれの市場を牛耳るプラットフォーム企業に対して明確に反旗を翻してきた。

例えば、パソコンゲームで中心的なプラットフォームであるSTEAM(スチーム)は、ゲームが売れた時に企業が支払う手数料が30%だ。エピックゲームズは自ら、手数料12%をうたった「エピックゲームズストア」をオープン。人気ゲームを囲い込み、ユーザーを増やしている。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。

アップルの手数料も30%で、アプリ内課金でも外部のシステムを使うことを認めていない。アプリ内課金が多いゲーム業界などでは、30%の手数料を「アップル税」などと呼んでいる。今回のアップルへの訴訟も、複数のプラットフォームでプレーできるゲームを開発しているエピック社が、個別プラットフォームの手数料が30%で固定されている現状に、風穴を開けようとしているわけだ。

今回、エピック社はこの現状を皮肉るパロディー動画を作成した。動画のもとになったアップルの伝説的なCMは、1984年に放映されたものだ。当時圧倒的なシェアを誇ったIBMのビジネス用コンピューターを、英作家ジョージ・オーウェルが描いた近未来小説「1984年」に登場する支配者「ビッグ・ブラザー」になぞらえた。アップルのパソコン「マッキントッシュ」を閉塞感に満ちた世界を破壊する革命的な存在として描いたものだった。

それから35年以上が経過し、テクノロジーの主役はビジネス用コンピューターからパーソナルコンピューターへ、そしてスマホへとシフトしてきた。アップルを訴えることは、エピック社が今後、仮想空間で中心的な役割を演じるという宣言ともとれる。

エピック社がアップルへの訴訟で勝利できるかどうかは、専門家の間でも議論が分かれている。1つだけ確かなのは、両社の戦いの行方が、今後のプラットフォームの力関係に変化をもたらすということだ。

[日経MJ2020年9月4日付]

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