森林火災、日本が貢献を
新風シリコンバレー 米NSVウルフ・キャピタルマネージングパートナー 校條浩氏

2020/9/1付
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シリコンバレーは、今でも煙に包まれ、焦げ臭い匂いが漂う。8月16日に2万を超える落雷により多方面の山中で火災が発生して以来、手がつけられない状態が続いた。今回の山火事で100万エーカー以上の森が焼失したという。東京都2つ分がすべて焼け野原になったのと同じだ。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、ベンチャーキャピタル及びファンド・オブ・ファンズを組成。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、ベンチャーキャピタル及びファンド・オブ・ファンズを組成。

実は、カリフォルニアでは毎年30万エーカーの森がはげ山となっている。さらに、米国全土では毎年500万エーカー(関東平野の広さ)の森が焼失するそうだ。動植物などのエコシステムの崩壊、環境汚染、二酸化炭素の増加などの悲惨な影響を与えている。

クリーンエネルギーの開発や電気自動車の普及推進はいいが、巨大な山火事の放置は残念だ。しかも燃やしたエネルギーは全て無駄に放出されてしまう。

イノベーションの中心であるシリコンバレーでこれだけの森林火災が発生してきているのに、新しい技術やプロセスは今まであまり提案されて来なかった。火事のデータ分析やモデル化、消防士の活動を支援するアプリケーションなどはあるが、対象は間接的なサポートが主だ。

理由は火事に関わる技術は、行政との関わりが必須なためだ。行政の協力という変数が加わり実現へのハードルが高くなり、立ち上げのスピードは遅くなる。

そんな中、去年からリアルタイム火災探知統合システム(FIRIS)と言われる火災探知のシステムが南カリフォルニアで実証試験され、良好な結果が出たとの報告がなされた。特殊な赤外線センサーを装備した飛行機を飛ばし、カリフォルニア大学サンディエゴ校のスーパーコンピューターとリアルタイムでつなぎ、火事の発生や延焼などを分単位で判断する。

それに、州の関係部署とも連携し、消火活動の詳細をリアルタイムに指示できるという。データのやりとりや消防関係者とのコミュニケーションのシステムは、コロラド州にあるベンチャー企業、インテラ社が開発した。

森林火災の問題解決ソリューションの開発は緒についたばかりだ。そこに、日本の大企業が参入してはどうだろうか。課題は、火災の発生予測、検知、延焼予測、消防隊支援、消火など多岐にわたる。そして、使われる技術も、データ収集・分析、AI、リモート操作、モデリング、高精細マッピング、ロボティクス、ドローン、化学材料など幅が広い。

特に、火災発生防止や消火のような能動的な方策に関係する技術が乏しい。例えば、避雷針となる棒を自動的に動き回らせ、落雷を減らすような技術はないものか。消火ではスタンフォード大学の研究者が新しい薬剤を開発した。森林に吹き付けるゲル状の液体で、セルロース由来の物質なので自然破壊はないという。

日本の森林火災は多くないが、オーストラリアでの大変な被害(北海道規模の広さを焼失)を見ても世界で進行する砂漠化は他人事ではない。日本企業が世界市民として貢献するチャンスだと見るべきではないだろうか。

[日経産業新聞2020年9月1日付]

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