プロスポーツ再開でDAZN復活 AR導入など変革に期待
読み解き 今コレ!アプリ フラー最高マーケティング責任者・杉山信弘氏

日経MJ
2020/8/26付
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NIKKEI MJ

新型コロナウイルスの感染収束が見通せず、スポーツ観戦もニューノーマル(新常態)を迫られている。フラー(千葉県柏市)のアプリ分析ツール「AppApe(アップエイプ)」によると、スポーツ配信のDAZN(ダゾーン)はプロスポーツの再開でアプリ利用者数は回復傾向にある。ただ、音楽ライブなどで動画配信に変革が起きる中、スポーツ観戦でもAR(拡張現実)など新しい付加価値を模索する段階に来ている。

日本におけるDAZNの主力コンテンツは、プロ野球中継とプロサッカーリーグであるJリーグ中継の2つ。それぞれのスポーツのシーズンに合わせて、ユーザー数は増減する傾向にある。2019年度はプロ野球、Jリーグのシーズンインである2月と3月から徐々に数字を伸ばし、サッカー日本代表の試合を独占配信した6月にピークを迎えた。シーズン終盤の10月ごろまでは安定推移している。

20年度は新型コロナの影響で各種プロスポーツの大会が延期となり、例年の傾向とは大きく様変わりした。まず3月から5月にかけて、19年度のオフシーズン並みに振るわない結果となった。ところが、プロ野球が開幕した6月後半以降、急速にユーザー数が回復。8月は週間利用者数で前年比で約20%増となっている。

DAZNをSVOD(定額制動画配信サービス)として見たときの特徴は、即時性の高い独占コンテンツの豊富さにある。

スポーツの試合はニュースで放送されてしまうこともあるので、結果を知らずに試合を見るためには基本的にリアルタイムで見る必要がある。国際大会ともなると各種SNSでの盛り上がりが生まれる。そういった「祭り」に参加するのにもリアルタイムでの視聴が必要となる。

このためドラマやバラエティーなどのコンテンツと異なり、リアルタイム視聴の価値が特に高い。DAZNは各種プロスポーツを独占的に配信していることもあり、月額1750円という他社のSVODと比べてやや割高な利用料金でも、ユーザーを獲得できている。実際、19年6月にサッカー日本代表の試合を独占ライブ配信した週は、史上最高のユーザー数であった。

鮮度が命のスポーツ配信は即時性の価値が極めて高い一方で、価値の低減も速い。新しいコンテンツが生まれない自粛期間中にユーザー数が急減したことは「試合・大会」という形式のコンテンツの賞味期限の短さという弱点をあらわにした。

無観客試合の増加によってスポーツのライブ配信はある意味「最も近い」ところでの観戦形式となった。複数視点での観戦が可能になったり、ARなどによって臨場感が増したりして、生での観戦とは違う価値を生み出せるようになりつつある。

音楽ライブなどの世界ではこうした変革をいち早く取り入れ収益化が進んでいる。スポーツ配信でも、あくまで即時性の価値を高めていくのか、それとも時間が経っても見たいコンテンツとしての価値を高めていくのか、供給側に戦略の幅ができた。DAZNなど動画配信会社の変革を期待したい。

[日経MJ2020年8月26日付]

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