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今、大事なのは問題文

新風シリコンバレー WiLパートナー 小松原威氏

新型コロナウイルスで教育格差や働き方など、多くの問題が噴出した。問題の大きさは新たなビジネスの揺り籠にもなる。2008年の金融危機時には、既存の金融機関が抱える問題を前に、多くのフィンテックベンチャーが勃興した。

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labsに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに。

新しいビジネスが解決する問題は何か。問題解決の前に、まずは問題を発見することが先決となる。

シリコンバレーでは会議で何かを相談すると、「OK、では今、どんな問題があるんだ」と問題そのものを議論することが多かった。一旦、問題が明らかになったかと思っても、「その背景にある本当の問題はこうじゃないのか」と議論が続く。なかなか解決策の話に進まないが、確かに間違った問題を解き続けることは時間の浪費だろう。

世の中の問題を発見することは、世の中に問い続ける行為と言える。幼い子供は親に「なんで、なんで」と、問い続ける。世の中の当たり前に疑問を持ち続けるためには、子供のような初心の心を持ち、好奇心を忘れないことが重要だ。

インターネットや人工知能が広がってくると、答えは必ずこの世のどこかに落ちており、答えの価値は下がってきている。今、大事なのは問題文だ。投げかける問題文が変わらなければ、いつまでたっても米アマゾン・ドット・コムの音声サービス「アレクサ」の答える内容は同じだ。

50年以上前、パブロ・ピカソは「コンピューターは役に立たない。答えしかくれないからだ」という言葉を残し「問い」の重要性を私たちに教えてくれた。

問いかけ方も工夫をしたい。「なぜ」という疑問を持ったら、次に「もし~だったらどうだろう」と問いかける。Airbnbの創業ストーリーは有名だ。大きなイベントが開催されてサンフランシスコ市内のホテルがどこも満室に。多くの人が泊まる場所に困っている状況をみて、創業者たちは「なぜ一晩泊まる場所すら見つけられないのだ」という疑問を持った。

そして、「もし僕たちの部屋の余ったスペースでエアマットを貸したらどうなるだろうか」という問題文を作り出した。見知らぬ人の部屋に寝泊まりするなんて、まだ一般的ではなかった時代だ。

米ネットフリックスの創業者のリード・ヘイスティングス氏の半ば伝説化している創業ストーリーも同様だ。ヘイスティングス氏がレンタルビデオを借りた時、返却期限を過ぎてしまい40ドルもの延滞料金を支払う羽目になった。「なぜ、こんなに高い罰金を払わなければならないのだ」という疑問から始まった。スポーツジムに行く途中に「もしレンタルビデオビジネスをスポーツジムのように月決めの会員制にしたらどうなるだろうか」という問題文を考え出した。

仕事でも与えられた問題を解き続けるだけでは、自分事にはなりにくい。当たり前を疑い、自ら問題文を作ることで問題意識が生まれていく。休暇中に少し時間を見つけて、「人生を賭けて解きたい問題はなんだろうか」と自分に問いかけてみたい。

[日経産業新聞2020年8月25日付]

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