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ベイクルーズのライブコマース 成功の秘訣は顧客視点と笑顔

奔流eビジネス (通販コンサルタント 村山らむね氏)

NIKKEI MJ

新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、小売業がネット上での顧客接点を強めている。特に生中継によるネット通販「ライブコマース」は、ここへきてアパレルの主要な売り方の1つになってきた。筆者が特に心をつかまれたのがベイクルーズだ。

視聴者がコメントや質問を書き込むと、すぐに出演者に伝わる

同社のライブコマースは、司会とモデルの掛け合いや語り口の良さ、そして何より出演するスタッフ陣の笑顔が印象的だ。昨年からインスタライブなどを始めていたが、今年3月に中国で実施したライブコマースに手応えを得て、5月22日に自社サイトでのライブ配信を始めた。ベイクルーズグループの電子商取引(EC)を統括する加藤利典氏は「毎回6000から9000人の視聴者を集めている」と話す。

動画はライブ配信だが1週間はアーカイブされて、いつでも見られるようにしてある。7月のある1週間で、動画配信経由の売り上げが2500万円を超えたブランドもあったそうだ。

成功の秘訣は大きく2つある。まずは顧客視点に立った見やすさだ。実店舗ではスタッフが肉眼で見えるので、自分との体格差が一目瞭然だが、動画配信ではサイズ感がわからない。そこで、予告のバナーにスタッフの身長を示したり、靴の高さがわかるよう最初に横向きで映ったりしている。商品の説明もどんなときに着られるか、着心地はどうかなど、顧客視点を徹底している。

もう1つは出演者の笑顔だ。実はライブコマースの出演者はすべてベイクルーズの従業員が務めている。すでにインスタなどで人気を得るインフルエンサーでもあるため、視聴者コメントがワクワク感を拡張して、一種のコミュニティーを醸成することに成功している。

こうしたことを反映してか、ライブコマースでは皆笑顔で楽しさが伝わってくる。実際に、ベイクルーズ従業員の中には「私も参加したい」という声が多いそうだ。視聴者がコメントや質問を書き込むと、すぐに出演者に伝わり反応が返ってくる。こうしたリアルタイムの双方向性も視聴者を引き付けている。

むらやま・らむね 慶大法卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経てマーケティング支援のスタイルビズ(さいたま市)を設立、代表に。

同社は8月7~9日の3日間、恒例のファミリーセールを池袋サンシャインシティ(東京・豊島)で開催した。今回はネット上でも開催し、ライブ動画配信も行った。このライブ配信は池袋会場のイベントリポート形式と、本社のプレスルームからのライブコマース形式の2パターンで実施した。

通常のファミリーセールではスタッフの仕事は会場整理くらいしかない。コーディネート提案などはなかったので、今回のネット配信では新たな価値が付いた。イベントリポートはまるでワイドショーの催事リポートのような臨場感があった。コロナ禍の制約を逆手に取り、大きな可能性を見せてくれた。

「デジタル接客」と書いてしまうとなんだか冷たい感じがするが、全く逆だろう。買い物をする場で声を出して笑う――そんなごく普通のことがまるでタブーのようになってしまった。笑顔のやりとりがデジタルで実現されていることが尊く感じられる。失われた笑顔が、ベイクルーズの動画配信にはあふれている。

[日経MJ2020年8月21日付]

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