オンラインの可能性
SmartTimes 社会起業大学理事長 田中勇一氏

2020/8/14付
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「人生の経営者であれ」。福岡大学の阿比留正弘教授は日々学生にそう諭す。同大学で毎回400人以上が受講する名物マンモス講義「ベンチャー起業論」の担当教員である。経済界から多彩な講師を招いたり、企業研究やビジネスプランコンテストなどで学生の自主性を重んじる演習を導入したりと学内でまれな存在の阿比留さん。これまで社会課題を解決する多くの人材を輩出してきた。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

阿比留さんは、欧米型の株主資本主義でも中国型の国家資本主義でもない、第三の道を目指す公益資本主義の考え方に感銘を受け、公益資本主義推進協議会(PICC)の理事も兼務している。その思想を多くの若者にも知ってもらおうと、福岡発のイベント「公益資本主義公開フォーラム」を6月27日に開催することを決めた。場所は1000人以上を収容できる学内の大講堂だ。

目玉は公益資本主義の提唱者であり、政府の要職として内閣府本府参与を務める原丈人氏の登壇。原氏はほかにもアライアンス・フォーラム財団代表理事、PICC最高顧問など多忙を極める。大学生主体で企画、運営し、地元経営者も巻き込みながら1年前から入念に準備を進めてきた。

ところが、コロナ渦でリアルのフォーラムは断念。やむを得ずビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」と、配信用に動画投稿サイト「ユーチューブ」を使ってオンライン開催することになった。そして迎えたイベント当日。関係者の心配をよそに、約1000人もの参加者が出席する一大フォーラムとなった。

原氏は基調講演だけでなく、参加者とのディスカッションに加わったり、経営者や若者による実践的な事例紹介を講評したりしたことで魅力あるコンテンツになった。司会進行は2人の女子学生。5時間を超える長丁場だったが、わかりやすく飽きさせない工夫によって非常に満足度の高い内容となった。阿比留さんの学生のモチベーションを高める力にも脱帽した。

若い世代の柔軟性と公益資本主義への関心の高さに驚かされた。参加者からは多くの賛辞が贈られ、運営を主導した大学生たちにとっても大きな自信となった。このイベントでウェブ会議システムの可能性を改めて発見した。地域や国境の垣根を越え人と人が容易につながることができ、広く世界に社会観を発信することができる。そして何より低コストだ。

PICCでもこの会議システムを積極的に活用し、全国の支部長が一堂に会したり、普段会議に出席しない会員が気軽に参加できる勉強会を開催したりとかえって協議会の絆が深まったともいえる。創意工夫を通してピンチをチャンスに変えれば人はいつでも前に進める。どんな状況であっても、社会をより良くする起業家やビジネスが生まれてくることを期待したい。

[日経産業新聞2020年8月14日付]

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