/

ネットとリアル、接点仕込む 酒蔵吉乃川(新潟県長岡市)

おもてなし 魅せどころ

NIKKEI MJ

創業472年、新潟県最古の酒蔵・吉乃川(長岡市)が日本酒と蔵のファン作りへと新たな策を次々に打ち出している。新商品やウェブ、現地の観光拠点の活用。3つの手段を組み合わせ消費者との距離を近づける。歴史深い酒蔵だが方法論は極めて現代的だ。

昨年10月に完成した酒ミュージアム「醸蔵」

「Sake Tonic」。7月21日、全国のファミリーマート約1万6600店に、黒を基調に上部がオレンジで彩られた缶が並んだ。炭酸とトニックウオーター風味にオレンジピールの香り付け。それでも残る日本酒の味わいがよく合うカクテルだ。関東甲信越のファミマ約6100店ではスパークリング日本酒「酒蔵の淡雪」も販売。アルコール度数は7度とサケトニックより2度高いが、飲み心地は良い意味で軽い。

今後は飲食店向けに日本酒カクテルのもとになる自社製品の「厳選辛口ソニック」も展開予定だ。峰政祐己社長は「県外では日本酒を口にしてもらう機会をつくり、県内に来た人には新潟の名物を味わう新たな方法として提案したい」と話す。

この春には創業来初めてクラフトビールの販売を始めた。商品の多角化で「単に良い日本酒を造り、売るだけでは合わない」(峰政社長)との現代の嗜好へと対応するのに併せて、消費者へのアプローチに向けて別の手段も打ってきた。

「酒蔵とお客さんの距離をもっと近づける」。2005年にマーケティング会社から吉乃川に転職し、16年に社長に就いた峰政社長は訴え続けてきた。第2の策がSNSをはじめとするウェブの有効活用だ。

7月にはクラウドファンディング(CF)の「Makuake(マクアケ)」で、ステンレス製ボトルに日本酒を詰めて顧客に届け、返送してもらえば蔵から日本酒をまた送るというサービスを開始。この「カヨイ」は1週間で完売し、北海道から沖縄まで全国から500万円が集まった。

3つ目の戦略が現地の酒蔵だ。長岡・摂田屋地区の本社の倉庫を改装して19年10月に観光ミュージアム「醸蔵(じょうぐら)」が完成。「お客様と酒蔵の関係を『醸す』」と命名した拠点も活用が本格化する。

創業は室町後期の1548年。「新潟では上杉謙信が春日山城に入城した年で有名」と京都府出身、以前は広告会社で大相撲などに携わった「吉乃川の歴史文化担当」の横本昌之経営戦略課長は説明する。蔵の歴史を発信しつつ時代にあった売り方を考え続ける。

吉乃川や摂田屋は戊辰戦争、大戦期の長岡空襲で長岡の市街地が焼け野原となっても姿を残した。どんな乱世も苦難の時代も、伝統を残しながら新たな活路を見いだしてきたDNAは今もこの地に根付く。

(新潟支局 松添亮甫)

[日経MJ 観光・インバウンド面 2020年8月10日付]

すべての記事が読み放題
まずは無料体験(初回1カ月)

「日経MJ」をお手元のデバイスで!

ヒット商品の「売れる」理由を徹底リサーチ。売り場戦略から買い手の最新動向まで、独自に取材。「日経MJビューアー」を使えば、全てのデバイスで閲覧できるようになります。最初の1カ月間無料でご利用いただけます。

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン