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コロナで責務増す社外取

SmartTimes セントリス・コーポレートアドバイザリー代表取締役 谷間真氏

新型コロナウイルスによりあちこちでニューノーマルが立ち現れる中、各企業の経営陣には社会の意識や環境の変化を適切に把握し、アフターコロナ時代に合致した経営戦略を再構築することが求められている。本来、今回のような非常事態において本質的な議論を行い最も重要な意思決定を下すべき機関は、業務執行を担う経営陣と社外取締役により構成される取締役会だ。

1971年生まれ。京大卒。公認会計士。2002年にIPO支援コンサルタントとして独立。07年から上場企業の経営者を務め、11年からシンガポールでも活動。13年にIPOビジネス再開

企業統治の原理原則であるコーポレートガバナンス・コードでは、取締役会の責務は企業戦略などの大きな方向性を示すこと、経営陣によるリスクテイクを支える環境を整備すること、客観的な立場から経営陣に対する実効性の高い監督を行うこととされている。

しかし、多くの日本企業の実態はといえば、取締役会は社外役員への報告及び業務執行に関する決議事項を承認するための形式的な会議体となっている。経営の本質について議論することはほとんどない。

新型コロナを契機に、日本のコーポレートガバナンスは、経営者へのけん制やコンプライアンス(法令順守)のための仕組みから、企業価値の最大化を目指すための会社統治のあり方へと進化しなければならない。アフターコロナ時代にこれまで事業の前提条件が変容する中で、大きな方向性を決定することこそ取締役会の責務だ。

取締役会が形骸化されてしまい、実質的な最高意思決定機関となる責務を担う能力を備えていない企業は、経営の方向性を大きく変化させることはできない。また、取締役会を中長期的な経営の議論を行う場とするなら、業務執行を伴わない社外取締役の責務は極めて重要になってくる。

言うまでもなく社外取締役には、プロフェッショナルとして企業経営に対する知見と能力が求められる。取締役会において経営の方向性を決定するとともに、経営陣のリスクテイクを伴う判断を支えるため、執行プロセスの検証と結果のモニタリングを行うことが必要となる。私も上場企業4社、未上場企業6社の社外役員を務めているが、常に経営の本質を議論する場にしようと心掛けている。

アフターコロナ時代の経営戦略を議論する中にあっても、経営陣は日常の実務に追われ、その企業や業界の常識で物事を判断していることから、現状を大きく変えることには概ね否定的だ。大局的な視点を同時に持つことも困難な場合が多い。

社外取締役は、傍目八目の立場で企業の経営を見渡し、将来を見通すことで取締役会の意思決定に関与することができる重要な存在となるべきである。経営陣は社外取締役に求められる役割や能力を十分認識し、新型コロナを契機としたコーポレートガバナンスのあり方を模索しなければ、日本企業の未来を描くことはできない。

[日経産業新聞2020年8月3日付]

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