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米国で在宅勤務疲れ、ライフ浸食 仕事量の増加に孤独感も

先読みウェブワールド (瀧口範子氏)

NIKKEI MJ

先日、米国の会社経営者とテレビ電話で話したところ、「毎日休む暇なく、次から次へとズーム会議をやっている」と話していた。新型コロナウイルスの感染拡大が続く米国では、今も在宅勤務を続ける会社がほとんどだ。以前と同じ仕事を在宅でこなそうとするあまり、パソコンにかじりついている人々は多い。

米国では在宅勤務をする人が増えている=ロイター

セキュリティー技術企業ノードVPNの調べによると、コロナ禍中の在宅勤務で社員は平時より平均3時間も長くパソコンにログインして仕事をしているという。真夜中を過ぎてからパソコンを立ち上げ、そこから数時間、仕事に向かっている人々も多い。コロナ禍以前は「ワークライフ・バランス」が働き方議論の中心だったが、今やワークがライフに侵入して、ともすれば侵食してしまいそうだ。

コロナ禍による独特な力学も働いている。例えば、誰もが在宅を余儀なくされているので「メールやメッセージにはすぐに対応できるはず」とか「そこにいないことの理由はない」と他の社員に思われていると感じ、過剰反応してずっと机の前で身構えているケースだ。

あるいは、浮いた通勤時間も仕事に充ててしまうケース。会社によっては、パソコン利用を監視するソフトウエアが導入されていたり、上司が「いつも仕事をするように」と半ば脅したりすることもあるらしい。リモートワークによって生産性が上がったという調査結果がいくつか発表されているのだが、その背景にはこんなストレスフルな事情もあるのだ。

イーグル・ヒル・コンサルティングが4月半ばに全米約1000人から回答を得た調査によると「在宅勤務でバーンアウトしている」と答えた人々は45%いた。バーンアウトの理由として「仕事量」を挙げたのは45%で「家庭生活とのやりくり」(35%)よりも多い。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

バーンアウト率は在宅勤務が長引くにつれて高まっているようで、人材サービス会社のモンスターが7月に実施した調査では、バーンアウトを感じているリモートワーカーは69%にも上っている。

リモートワークによる孤独感も、懸命に働こうとすることにつながっているとする専門家の意見もある。同僚社員の様子が見えないため、自分が取り残されているように感じられるのだ。人材マネジメント協会(SHRM)などの組織は、企業のリーダーがリモートワーカーのメンタルヘルスに留意するよう呼びかけている。

そもそもビデオ会議システムに不自然さがあるという指摘も見逃せない。相手とずっと直視し合うというのが疲労感を増すのだという。そんなこともあってか、当初は歓迎されていたリモートワークに対する否定的な見方が最近は増えている。

ギャロップが5月末に発表した調査によると、4月半ば時点で在宅勤務を実施しているのは全従業員の62%。リモートワーカーの26%は「在宅規制が解除されればオフィスに戻りたい」としている。オフィス勤務と在宅勤務の選択があれば理想的なのだろうが、米国のコロナ禍は終わりが見えず、選択肢のない状況が続いている。

[日経MJ2020年8月3日付]

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