プラごみ対策決定打なく レジ袋有料化 環境考える契機に
Earth新潮流 三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷尚氏

2020/7/31付
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7月1日からレジ袋の有料化が始まった。レジ袋の国内生産量は年間で約20万トン、輸入分を加えて30万~60万トンが毎年使われている。プラスチックの年間消費量の1000万トン強に比べるとごくわずかだ。

再生資源として中国へ輸出できず、積まれたままになったプラスチック廃棄物(2018年7月、東京都内)

再生資源として中国へ輸出できず、積まれたままになったプラスチック廃棄物(2018年7月、東京都内)

レジ袋有料化は数量面でどれだけ効果があるのか懐疑的な意見もあるし、ごみ袋として使うので無駄ではないという声もある。ただ、身近な問題であり、プラごみの処分や海洋汚染対策を考えるきっかけになることは間違いないだろう。

プラごみ問題は一筋縄ではいかない難問だ。コロナ対策で使われる防護服や医療器具、薬品の包装、マスクも石油化学製品だ。さまざまな場所で使われ、重宝されている。機能性と加工性、かつ低コストと十分な理由があるから普及してきた。海洋汚染の元凶だから、とプラ製品排除を単純に目指すだけでは解決策にならない。

上手に使う仕組みとして推進されるのがリサイクルで、取り組みが最も進んでいるのがペットボトルだ。コカ・コーラ社の資料などによれば、ペットボトルの98%は回収され、84%がプラスチック原料(樹脂)に再生されている。

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環境面で望ましいとされる樹脂への再生比率がかなり高いのは、ペットボトル用樹脂が高価格で再利用の価値が高いことがある。大量に使われ、かつ透明ボトルが中心と回収・再生に向いている点も大きい。

それでもペットボトルに再生されるのは樹脂の2割以下で、残りは繊維やシートなどに変わるという。ラベルやキャップも同じくプラスチックだが、樹脂の種類が異なると再生工程が違うのでリサイクルを促進するには分別の徹底が必要だ。

台所用品のような家庭雑貨などは分別がさらに面倒になるから、消費者の協力だけではプラ製品の再生には限界があるだろう。染料などの除去技術、分別回収に協力すれば消費者が得する仕組み、といった技術と経済合理性の両面で工夫が求められる。

自然環境の中で分解されて、海洋汚染リスクが低いとされる生分解性プラスチック、生物由来の原料を使うバイオプラスチックも脚光を浴びている。農業用フィルムなどで利用実績はあったが、レジ袋にも使われるようになったのは強度など品質面が向上してきたからだ。さらに普及するためには価格引き下げや分解性と耐久性の両立、添加剤の安全基準など技術改良が求められる。

バイオプラスチックでは、原料となるバイオマス(生物資源)の安定供給について注意しておきたい。例えばバイオ燃料は使っても二酸化炭素(CO2)を増やさないとして、航空や海運の業界で期待されている。国際エネルギー機関(IEA)、国際再生エネルギー機関(IRENA)などは、温暖化ガス対策を掲げたパリ協定の気温2度までの上昇目標達成のためには現在の2~3倍のバイオエネルギーが必要と見込んでいる。

しかし、農地でバイオプラスチック用の作物を作れば食料供給を圧迫するうえ、大規模な農地開発は森林減少によるCO2放出や生物多様性の問題を招く。

貴重なバイオマス原料の争奪戦を避けるには、流出が避けがたい漁具や経年劣化で破片などが散乱してしまう工事用コーンなど回収が難しい製品に使うとよいのだろうが、もともと安さが求められる分野という難しさがある。

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もう一つのプラごみ対策は焼却処分だ。日本ではプラスチックの6割が発電やセメントなど産業用途で活用されている。ごみ発電を行う東京都では、燃やされる家庭ゴミの20%がプラスチック類というから、ごみ出しに使われたレジ袋も立派に代替燃料として貢献していることになる。

エネルギーとして利用すればCO2と水素に分解される。優れた海洋汚染対策の一つのはずだが、国際的にはあまり評価されていない。

これまで世界の廃プラの9%が再利用され、12%が焼却処分になり、残り約78%が埋め立てだそうだ。ごみ発電が普及しているのは日本や中国などに限られており、流出すれば海洋汚染につながる埋め立てが世界の主流なのだ。

しかし都市化が加速する東南アジア諸国連合(ASEAN)などでは、埋立場所の制約などからごみ発電が注目されている。ごみ回収システムの整備は、清掃工場などを運営する東京二十三区清掃一部事務組合などが支援しており、残る課題は実際に回収・発電する自治体の財政力だ。どこの国でも地方自治体の財政は弱い。現地政府がゴミ発電導入の資金調達や返済を支える仕組み作りを支援すれば、世界のプラごみ問題への大きな貢献になるだろう。

環境面ではプラごみを回収し、樹脂に戻して再利用するが望ましい。汚れたプラスチックを大量の水とエネルギーを使って再生するのでは、合算して考えても環境にやさしいかわからない。バイオプラスチックの活用にも資源の制約がある。

「あちらをたてればこちらがたたず」になってしまい、プラごみ対策の決定打はなかなかみつからない。まずは汚染の程度と原因を詳細に分析し、資源や製品のサプライチェーンを気候変動や生物多様性といった様々な環境制約の点から同時に考える。こうした選択肢を使い分けるのが、平凡だが現実的な対応だろう。プラごみは環境問題の縮図だ。ここから学ぶことは少なくない。

[日経産業新聞2020年7月31日付]

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