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常識覆すデジタル技術革新 医療・行政で効果を発揮

先読みウェブワールド (野呂エイシロウ氏)

NIKKEI MJ

今、世界の研究者は懸命に新型コロナウイルスの新薬開発をしている。そんなときに過去の論文が役に立つ。もっとも古今東西の論文の数は膨大で、グーグルなどで検索してもなかなか目的の論文にたどり着けない。そこで出てきたサービスが、過去の論文などを関連付けて調べられる「InTreS」だ。

InTreSは検索したテーマに関連する情報のつながりをビジュアル化して表示

筆者はこのサービスのデモを見る機会に恵まれた。開発したのはIT(情報技術)系のスタートアップ、アイエクセス(東京・中央)という企業である。

病名などのキーワードを入力すると、指定したテーマに関連する情報のつながりとトレンドをビジュアル化して表示する。内容的に近い情報同士を色分けしたり、意味的に近いものを集めて表示するなどわかりやすく分類する。

山崎邦利社長は「人類がこれまで蓄えてきた大量の文章データを人工知能(AI)で検索しやすくした」と話す。医療機関や大学、医学系研究機関、製薬会社の利用を想定している。新薬の開発などで効率性を高めてもらうのが狙いだ。

デジタル技術で変革を促すデジタルトランスフォーメーション(DX)が、こうした医療関連の現場で進んでいるが、旧態依然とした行政の分野でも特に力を発揮する。沖縄県浦添市では、がん検診の案内を携帯電話やスマートフォンのショートメッセージで送るサービスを開始。従来のはがきでの通知だと受診率は17%程度だったが、ショートメッセージを使うことで、2倍以上に高めた。

しかも携帯のメッセージは切手よりも安価で1通信10円程度。情報は携帯・スマホに入っているので、はがきのようになくすこともない。そんな仕組みを提案したのはIT系スタートアップのケイスリーだ。

のろ・えいしろう 愛知工大工卒。学生時代から企業PRに携わり、出版社を経て日本テレビの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で放送作家デビュー。戦略PRコンサルタントとしても著作多数。愛知県出身。

浦添市が導入したのは同社の「ベターミー」というサービス。同市は内閣府沖縄総合事務局が主催する「沖縄県成果連動型事業推進プラットホーム」に参加し、この実証実験を始めることになった。サービスの基本となっているのは行動経済学(ナッジ理論)に基づく公的通知の自動化だ。

ショートメッセージには「早期大腸がんと進行大腸がんの医療費には約300万円の差がある」「女性の大腸がんの死亡数は1位、男性は3位」という行動に働きかける言葉を使っている。これで危機感や費用対効果を感じた人が受診するようになった。

多くの自治体はがん検診の受診を住民に促そうとするが、予算を決める意思決定で重要な指標は「何通はがきを郵送するか」であるとケイスリーの幸地正樹社長は指摘する。これを「がん検診を何人受診するかという、事業の成果を重視した意思決定に変える取り組みが重要」(幸地社長)という。

「官民連携を成功させるには大都市で始めるより、地方で始める方がいい」とも幸地社長は話す。新しい取り組みを進めるには、チャレンジする職員の協力が必要で、こうした職員は「地方・地域にこそ多い」のだそうだ。デジタル技術を使って官民問わずサービス提供者の意識を少しでも変えられれば、社会そのものが変革していく。

[日経MJ2020年7月27日付]

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