アップル、スマホの次はウエアラブル 立体音響技術でARに布石
先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

2020/7/20付
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NIKKEI MJ

米アップルの開発者向け年次会合である「WWDC2020」が6月に初めてオンラインで開催された。事前の噂どおり、アップルのパソコン製品「Mac(マック)」の頭脳部分であるCPU(中央演算処理装置)を、インテル製から自社製に転換していくことが発表された。

WWDC2020で発表された立体音響機能=ロイター

WWDC2020で発表された立体音響機能=ロイター

他に目立った発表がなく、この話題だけが拡散したわけだが、実は今後の重要な戦略をうかがわせる「小さな発表」もあった。それが、ワイヤレスイヤホンの「AirPods Pro(エアーポッズ・プロ)」に付加された「スペーシャル・オーディオ(空間オーディオ)」という機能だった。

一言で言えば「立体音響機能」で、重要なのは仮想現実(VR)や拡張現実(AR)に対応している点だ。左右の耳にかけるワイヤレスイヤホンから、前後左右上下などから仮想的に音声が聞こえる。センサーを使って頭の動きを検出し、例えば後方から声が聞こえたと思って振り返ると、今度はちゃんと正面から聞こえるようになる。

近年のアップルはスマートフォン「iPhone」を圧倒的な主力製品として推進する一方、その成長速度の鈍化に悩まされてきた。その陰に隠れて見えにくいのだが、実はこのエアーポッズや「アップル・ウォッチ」など「ウエアラブル」と呼ばれる周辺製品が急成長している。

エアーポッズは従来のアップル製品のなかでも最高の成長率を示し、2019年は6000万台、20年には9000万台にまで出荷を伸ばす計画だとされている。ウォッチの方も一時期の不評を吹き飛ばし、19年に3000万台以上を出荷するまでに成長した。これらでウエアラブル市場のシェア3割以上を握り、2位である中国の小米(シャオミ、12%)を引き離して首位を快走中だ。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

アップルはさらに加速するため、この5月にVR関連ソフトウエア開発のネクストVR社を買収した。どうやら、長らく噂されてきたAR向け製品であるアップル・グラス(メガネ)の実現に一歩近づいたようだ。

新機能を付加したエアーポッズ・プロをグラスとともに装着すれば、重装備のゴーグルを付けなくてもAR体験が可能になるかもしれない。アップルは数年前からiPhoneやiPadにAR・VRの拡張機能を追加する「VRkit」を開発してきた。最新の一部機種には拡張機能を利用できる高機能カメラを搭載。仮想現実を次の主戦場とすべき準備を整えている。

筆者はウォッチとエアーポッズ・プロを日常的に使っている。近所を散歩するくらいなら、もはやiPhoneは不要と感じている。音楽などを聴けるのは当然として、思いついた用事は音声を介してメモできる。非接触型決済を使い、自動販売機で飲み物も買える。

身につけていても不自然でないようなグラスを装着すれば、新たな世界に引き込まれるだろう。散歩しながらオンライン会議に参加し、バーチャルな同僚に顔を向けて話すこともできるかもしれない。仮にそうなれば、話し声を隠すためにもマスクの装着が必須になる。

[日経MJ2020年7月20日付]

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