朝井まかて「秘密の花壇」(159)

朝井まかて「秘密の花壇」
2020/7/16付
情報元
日本経済新聞 夕刊
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その他

七章 八本の矢 13

どの医者も「恊熱痢(きょうねつり)だ」と診立(みた)て、楊庵(ようあん)が処方の薬を用いるのみだ。

手をこまねくうち、下の妹、菊(きく)が蒼白(そうはく)になって訪れた。兄の様子を見て取るや、馬琴を黙って見返す。

菊は二歳にして父を喪(うしな)い、十二歳にしてまた母を喪った身だ。その後、兄の興旨(おきむね)が育てた。親のない妹をそれは慈しみ、寛政二年、兄がかつて奉公してい…

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