人生を懸けた起業、手本に
SmartTimes 社会起業大学理事長 田中勇一氏

2020/7/6付
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「いい人生 いい社会」を企業理念に掲げるのは、インターネットテレビ局を運営するカウテレビジョン(福岡市)の代表取締役社長の高橋康徳さん。自分自身の良き人生を通して、良い社会づくりに貢献しようという意味だ。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

大学3年生の時に知り合ったオーストラリアの放送作家の影響で映像制作の世界を志し、その後テレビ局へ就職。報道記者として社会人生活をスタートさせるが、6年目に大きな転機を迎える。それは2001年9月11日の米同時多発テロ事件だった。発生後、現地に赴き、被災者救済センターの取材を通して命のはかなさや一度きりの人生の尊さを思い知る。帰国後、高橋さんは2年間も「人生を懸けて成し遂げる仕事とは何か」を考える日々を過ごした。

そんな中、自分が心から誇りに思える仕事があることに気づく。ドキュメンタリー番組の制作だ。志高く奮闘する人の努力に密着し映像として番組化する。これなら報道記者の経験を生かすこともできて人生を懸けられる。さっそくドキュメンタリー番組制作会社の起業を決意した高橋さんだったが、家族や友人は猛反対だった。

くじけそうになる心を陰で支えてくれたのは仲間の起業家たちだった。「自分と同じように志を持った起業家の生き様を映像化したい」。作り始めた作品は、起業に反対していた妻の心をも動かした。独立への自信を深めた。しかし、事業を軌道に乗せるのは簡単ではない。倒産危機の憂き目にあいながら暗中模索を続けるうちに、たまたま出会った起業家に触発されてたどりついたのがインターネットTV局の構想だった。

04年ごろはまだユーチューブのような動画配信サービスは盛んではなく、福岡でインターネットを通じたTV局の運営と、企業のプロモーション映像制作を受託するというビジネスモデルは大いに注目を浴びた。クライアントから少しずつ仕事を受注するようになり、今では30人のスタッフとともに130社1100本を超す映像制作を手がけている。

高橋さんは公益資本主義推進協議会(PICC)福岡支部のメンバー。PICCでは全国各地で若者の就業意識をポジティブに変えるための社会参加型イベントを毎年開催しているが、昨年の九州地区は高橋さんが中心となってプロの仕事を目の前で体験できる企画を打ち出した。

参加した学生や子供たちからは、仕事への感謝の気持ちを素直に「ありがとう」と言えるイベントとなり大成功。アイデアや構成、進行で高橋さんの映像制作ノウハウが生かされた。本業でクライアントの長所を引き出す、イベントで若者に気づきを与えるなど、常にさまざまな価値を届けようとしている高橋さんはまさに社会起業家の手本である。

[日経産業新聞2020年7月6日付]

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