朝井まかて「秘密の花壇」(150)

朝井まかて「秘密の花壇」
2020/7/6付
情報元
日本経済新聞 夕刊
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七章 八本の矢 4

兄が主宰の俳席に集う者は皆、武士だ。

町人として世を渡る己をしばし忘れ、口うるさい女房のことも忘れられる。お百は気の張る来客を面倒がるので、本屋はおろか、兄夫婦も滅多(めった)と招いたことがない。

「清(せい)は息災ですか」

訊(たず)ねると、添が抱いてつれてきた。桃色の綿入れに包まれ、馬琴が抱いても笑い声を立てる。お幸(さき)と違って風邪一つひかず、鳥のように泣き喚(わめ)…

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