リスク備えデータ利活用
SmartTimes ネットイヤーグループ社長 石黒不二代氏

2020/7/3付
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スマートフォンによって我々の生活は変わった。行動の多くはログデータとして記録でき、位置情報やSNS、買い物履歴などを第三者が全て取得すれば生活や暮らしぶりさえも分かる。音声データが大量にあれば音声合成により、本人になりすまして家族や知人に頼みごとをすることもできる。個人データの活用と悪用は紙一重であり、その功罪を十分に理解しながら、各国は個人情報の取り扱いを規定してきた。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

新型コロナウイルスに対応するための個人データの利用方針には国によって大きな違いがある。これはコロナ以前からの政策の違いが、対応に如実に表れている。中国では、国や企業が大量の個人データを集めて利用しても構わないという考え方が軸となっており、個人の監視と情報の開示があからさまに行われた。

いちはやく個人データ活用のガイドラインを設けたEUのGDPR(一般データ保護規制)では、個人の権利を強化。データを扱う企業への制裁を厳格化しているため、EUとして個人データを用いたコロナ対応はなされていない。

日本は比較的ヨーロッパと考え方は近い。日本は各国と比べコロナ対応に優れているとされるが、個人データはあまり利用されていない。言い方を変えれば、データを利用したらもっと感染経路などのトラッキングはできた。平時を想定して作られた基準に各国で見直しの動きがあるのは当然のことで、米国でも5月に新型コロナの感染追跡用のAPIの提供を始めた。

基準を今すぐ変えろというつもりはない。しかし、新型コロナのようにパンデミックは今後もいつでもやってくる。その時に備え、即時対応できるガイドラインを作っておき、技術検証しておくことは必要だ。

私が注目しているのは、日本の独自モデルとして個人データを預かり、運用していく「情報銀行」という仕組みだ。個人がデータを預金のように情報銀行に委託する、個人との契約に基づき他の事業者とも情報を共有する。例えば、自分の過去の病歴、食事、運動、体重の変化など、メリットがなければ第三者に渡したいとは思わないが、そのデータに基づいて人工知能(AI)が運動や食事について最適なアドバイスをしてくれたら話は別だろう。

セキュアなシステムにデータを預けることによって得られる「ユーザー体験」は、複数の企業が情報を持ち寄ることで実現される。フィットネスクラブは、個人がこれらの情報を提供すれば、個人に最適なトレーニングメニューを開発できるだろう。旅行会社も同様だ。コロナだから在宅勤務やビデオ会議が進むように、今までできなかったことの一つとして個人データの利用の実験がもっと進んでほしいと思う。そのメリットを日本国民が享受することでデータの利活用が進むのだと思う。

[日経産業新聞2020年7月3日付]

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