春秋

2020/6/30付
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未確認生物という言葉には、どこかワクワクする響きがある。昭和の時代にその横綱格といえば、ネス湖のネッシーだった。漫画ドラえもんにも、のび太が「絶対にいる」と言い張っていた場面があった。が、その夢を科学者たちが昨年、環境DNA技術で打ち砕いた。

▼湖の水をくまなく調べたところ、知られている生物のDNAしか見つからなかったという。どんな生物も皮膚のかけらや排せつ物を出して生きているから、もしネッシーが生息するなら未知のDNAが発見されるはずだ。この「不在の証明」をもって「怪物」の正体は巨大なウナギではないか、と研究チームは結論づけた。

▼これとよく似た手法を使って、新型コロナウイルスの追跡が始まった。今度の舞台は下水道である。人間が排出した下水を採取して、ウイルス生息の痕跡をたどる。イタリアの調査ではすでに昨年12月に潜伏をしていた可能性がわかった。国内ではウイルス量を手掛かりに、第2波の兆候をとらえるようとする研究が進む。

▼日本の下水道の長さは足し合わせると約47万キロで地球を12周する。明治以降、近代化の努力のなかで整備し、疫病から健康を守ってきた。そういえばマスクや手洗いといった地道な公衆衛生上の習慣が、日本での感染爆発を阻んだとの見方もある。ネス湖ならぬ下水にうごめく生命体を想像して、地面の下に思いをはせる。

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