朝井まかて「秘密の花壇」(144)

朝井まかて「秘密の花壇」
2020/6/29付
情報元
日本経済新聞 夕刊
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その他

六章 婿入り 25

草稿を読み終えた蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)は、しばらく黙して微動だにしない。

いつもそうだ。深い息をして、物語の余韻を味わい尽くしているように見える。いや、それは己惚(うぬぼ)れが過ぎるというもの、冷徹な思案を巡らせているのかもしれぬ。

これは出板できる代物であるか、御公儀(おかみ)の忌諱(きい)に触れぬか、何部刷って何部売れようか。

馬琴も黙っていた。

この後、忠…

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