豪華な内装でフルーツ堪能 コロナ後は「味+α」で

街に活気が戻りつつある。それに伴いコロナ禍で開業を延期していた店舗が次々と開店している。創業100年を超える老舗青果店の水信(みずのぶ、横浜市)が25日に横浜市内に開いたカフェレストラン「水信フルーツパーラー」もそのひとつだ。水信のグループ企業で、レストランなどを展開する水信ブルックス(横浜市)が運営する。
横浜高速鉄道みなとみらい線の馬車道駅近くで25日に開業した商業施設「北仲ブリック&ホワイト」の1階で営業する。もともとは4月23日の開業予定だったが、緊急事態宣言の解除を待って25日に開業日を変更していた。
筆者は5月中に店舗を視察しており、この店のオープンが気になっていた。JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」などの車両デザインで有名な水戸岡鋭治氏が店舗設計を手がけたからだ。
店内に入ると、しつらえの良いホテルのラウンジのような空間が広がる。天井には格子模様のステンドグラスをあしらっているが、よく見ると色ガラスの配置がすべて違っている凝りようだ。
椅子の背もたれは細かな組子細工になっており、座面の生地の柄はすべて異なっている。微に入り細に入り手の込んだデザインが施されていて、まるで工芸品の中に入り込んだような気持ちになる。
同店の立ち上げを担当した水信ブルックスの大釜研悟氏は「大人がくつろげる高品質の空間を実現するためにできる限りのぜいたくをしました。内装費は一般的なカフェレストランの2倍から3倍はかかっています」と話す。
フルーツメニューには青果店の威信をかけて、厳選食材をふんだんに使うのが特徴だ。

例えばオープン時には山形県の契約農家からブランドサクランボの「紅秀峰」と「佐藤錦」を取り寄せてパフェにする。パフェは高さのあるパフェグラスは使わず、カクテルグラスのような横に広いグラスを選んだ。「食べやすさと美しさを両立した盛りつけを心がけています」と大釜氏。季節ごとに旬のフルーツを使ったパフェやフルーツサンド、ワッフルなどを提供する。
こうしたスイーツメニューに欠かせないホイップクリームには乳脂肪分の異なる生クリームを数種類使い、果物の甘味や酸味と調和するよう仕上げている。ちなみに、パフェなどのメニューの価格は2000円代が中心だ。店舗ではケーキなどの物販も行う。
当面の営業時間は午前11時から午後7時までだが、同じ施設内にある「ビルボードライブ横浜」が開業すれば、営業時間を延長してアフターライブのお客が楽しめるようにアルコールの入った夜パフェも提供する予定だ。
ここ数カ月、テークアウトや宅配に軸足を置いた飲食店も多かった。こうしたサービスを使えば専門店の味を家庭でも楽しめるのだが、物足りなさもある。
水信フルーツパーラーの店舗デザインに触れると「外食の楽しみは味だけではない」と実感する。アフターコロナに繁盛するには、これまで以上に「おいしさ+α」が重要になるだろう。ぜいたくな空間で思う存分、季節のフルーツを楽しみたいと思いを巡らせている。
(フードジャーナリスト 鈴木桂水)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。"美味しい料理のその前"が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。
[日経MJ 2020年6月26日付]
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