朝井まかて「秘密の花壇」(135)

朝井まかて「秘密の花壇」
2020/6/18付
情報元
日本経済新聞 夕刊
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六章 婿入り 16

団扇(うちわ)を盛んに動かせど、汗が止まらない。

我が書斎は、南北に窓がある。冬は陽光で明るいのだが、夏は大釜で煎られる豆の心地がよくわかる。南窓は夕方の西陽まで誘い込み、夜は屋根の瓦のいきれが凄(すさ)まじい。

息を切らしながら筆を持てども汗で指が滑り、思考がまったく続かない。著述のみならず、読書にも身が入らぬほどだ。階下の八畳に下りてみても、赤子の滝は泣くしお百の立てる…

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