一歩先へ進化伴う復興を
SmartTimes BEENEXT ファウンダー・マネージングパートナー 佐藤輝英氏

2020/6/17付
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コロナショックを受け、アジアのスタートアップの動きが目まぐるしい。当面の資金確保とコスト削減にめどをつけ資金調達環境の変化に備えながら、自社技術や保有アセットを再度点検。コロナ後の「ニューノーマル」にどうやって強みを発揮していくか各社、工夫を凝らしている。インドの事例をいくつか紹介したい。

ヘルシアンのドライブスルー型PCR検体採取サービス

ヘルシアンのドライブスルー型PCR検体採取サービス

在宅での健康診断サービスを手がけるヘルシアンは、国内初となるドライブスルー型のPCR検体採取サービスを開始した。同様にリモートワーク明けの会社員が、オフィス勤務に戻る前に在宅でPCR検体採取ができるサービスや、オフィスの衛生管理を医療的見地でモニターするサービスなどの提供を始めた。サーモグラフィーのカメラから乳がんを検査する技術を持つニラマイは、自社の人工知能(AI)技術で熱画像から多くの人の発熱と呼吸器の症状をリアルタイムに検出することを可能にした。

オンライン診療サービスを展開するエムファインは需要拡大で、提携する病院と医師の数が増えた一方で、エムファインレーダーという、コロナ感染者のヒートマップがひと目でわかる新しい機能をいち早くリリースした。400万人のエンジニアのデータベースを持つハッカーアースでは、インドのトップビジネススクールであるインド経営大学院バンガロール校と共同で72時間のオンラインハッカソンを開催し、コロナ問題に対処するソフトウエアプロダクトの開発を促進した。医療以外の領域でも(クラウド経由でソフトウエアを利用する)SaaSを使った外食産業のデジタルシフト支援、ECプラットフォームを活用した小売業界のオンライン化支援、モバイルウォレットを使った支援金の送金など変化に対応したデジタルシフトが起き、課題解決が進んでいる。

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

この動きは他国も同じで、各産業のデジタル化を推進する機運が高まっている。シンガポール政府は企業のデジタル変革を政策骨子に据えた。都市封鎖で打撃を受けた飲食店や小売店に、デジタルツールやデータ分析機能を導入すると数千シンガポールドルの支援金を支出する。名物のホーカーセンター(屋台街)においても電子決済の導入を促し、1店舗あたり月300シンガポールドルを支給するという。雇用創出を目的に、最新のデジタル技術を身につけた人材を育成する方針も発表した。

コロナショックから立ち直り新しい未来を創造していくためには、元の姿に戻る「復旧」ではなく、進化を伴う「復興」という観点が重要だ。各業種がデジタル技術の利活用を推し進め、世界が一歩先へ進化することを願っている。起業家は知恵を絞り、リスクを取り、イノベーションを通じて未来創造に貢献できるよう動くことが求められている。

[日経産業新聞2020年6月17日付]

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