ホリエモンロケットの発射延期騒動 ネットの力、行政を揺さぶる
先読みウェブワールド (山田剛良氏)

2020/6/14付
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NIKKEI MJ

ホリエモンこと堀江貴文氏らが創業したロケット開発のインターステラテクノロジズ(IST、北海道大樹町)は3日にオンライン会見を開き、5月の打ち上げが延期された観測ロケット「MOMO5号機」を6月中に打ち上げると発表した。ただ、打ち上げ日の13日を公表したのは12日で、前日までは伏せられた。この異例の措置に、新型コロナウイルス危機に翻弄された同社の苦悩がにじんでいる。

オンライン会見するISTの稲川社長(左上)と堀江氏(同下)

オンライン会見するISTの稲川社長(左上)と堀江氏(同下)

騒動の始まりは4月27日。堀江氏が自身のツイッターで突然「今日すごく嫌なことされたので大樹町民やめます」と投稿した。ISTが5月2日に予定していたMOMO打ち上げの延期を、大樹町から求められたからだ。理由は新型コロナ。町外からの見物客がウイルスを持ち込むと住民が懸念した。

IST側は手を打っていた。(1)関係者を含む見学者への来町自粛呼びかけ(2)通常は打ち上げ時に開く見学場やパブリックビューイング会場の設置見送り(3)35平方キロメートルの範囲で立ち入り制限など。ここまで準備して「無観客打ち上げ」を実施しようとしたが、最終的に町からの回答は「ノー」。ISTの稲川貴大社長は「ロケット打ち上げは(自粛が要請された)集客イベントではなく当社の事業。町の要請には十分な根拠や基準がない」と嘆いた。

今回の騒動は皮肉にも、ISTと大樹町が二人三脚で進めてきた「打ち上げの集客イベント化」が背景にある。

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から日経テクノロジー・オンライン(現・日経 xTECH)副編集長。17年10月から日経ものづくり編集長も兼任。京都府出身

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から日経テクノロジー・オンライン(現・日経 xTECH)副編集長。17年10月から日経ものづくり編集長も兼任。京都府出身

ISTが大樹町にロケット射場を設けたのは2013年。ISTの知名度を街おこしにつなげたい大樹町の意向に沿って、両者はロケット打ち上げを積極的に来町イベントにしてきた。有料公式見学場の設置や見学ツアーの企画、パブリックビューイングの実施などがそれだ。実際、19年5月の打ち上げでは人口約5500人の町に、5700人以上が来町した。

この集客力がコロナで一転、町から打ち上げ延期を要請される要因となった。大樹町の担当者は「高齢者が多く、病院の少ない町では感染拡大への不安は根強く、払拭は難しかった」と説明する。一方、6月の打ち上げを認めた理由を大樹町ははっきりと説明していない。ISTの対策は前回とほぼ同じ。違いは打ち上げ日程を前日まで秘密にした措置だけだ。大樹町は交通の便が悪いため「前日に知っても北海道外から来町するのはハードルが高い」(稲川社長)としている。

騒動をよそにネット上ではISTへの熱烈な支援が続いている。打ち上げ延期決定後に始めたクラウドファウンディング(CF)では、わずか10時間で目標金額の900万円を達成した。5月末の終了時点で4200万円以上を集めた。3日の会見で稲川社長は「全国から応援されているプロジェクトだと証明できた」と強調。CFの盛り上がりが、大樹町などの判断に影響を与えたことを示唆した。

稲川社長は「大樹町とは改めて足並みをそろえている」と話し、堀江氏も「(大樹町民をやめるかどうかは)給付金をもらってから考える」と独特の表現で関係正常化を示す。旧態依然とした日本の行政をネットの力で揺さぶる展開は、いかにも新世代の企業らしかった。

[日経MJ2020年6月14日付]

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