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余白のない世界で生きる

SmartTimes PwCコンサルティングパートナー 野口功一氏

新型コロナによる緊急事態宣言が出て以降、オフィスに出社をせずリモートワークをされている方も多いと思う。リアルな場での業務や打ち合わせなどが一変。直接人と接しないでテクノロジーを使ってコミュニケーションするという急激な変化がたった2カ月ほどの間で起こっている。

イノベーションを生み出すための仕組み(プラットフォーム)づくりに従事。海外のスタートアップや大学、NPOとも連携してイノベーションの創出を戦略策定から支援している。

こうした仕事のやり方が従来ともっとも違うのは何だろうか。よくリモートだと「ニュアンスが伝わりにくい」とか、「物足りなさや不安を感じる」という声を聞く。一方で、リモートだからこそ「人が集まりやすく調整もしやすいので便利」「無駄な会議や会話が減った」との声もある。

必要最低限のことを単純明快にコミュニケーションすればよいので生産性は上がっているのかもしれない。他方、リモートの打ち合わせは意外と疲れるという声もある。集中して伝えようとするからだろうか。

リモートが当たり前になると通常の社会生活で物理的にも精神的にも、いわば「余白」がなくなってくるような状態になる気がする。余白のない世界では私たちの仕事も必要なスキルも変わっていく。短いミーティングで最低限の言葉で理解してもらう言語能力や話し方が必要となるだろう。文章力も今まで以上に必要かもしれない。伝わりにくいニュアンスを伝えるために豊かな言語表現のスキルも必要かもしれない。

そして、余白のない世界では人への気配りも変わるだろう。対面での打ち合わせは参加者を俯瞰的に見ることができるので、発言を促したり相手の表情などをチェックしたりして進めることができる。だが、リモートではそれが難しいのでより目配りや気配りが必要となる。

また、自宅で仕事をするケースでは仕事とプライベートがより一体化する。オフィスにいれば意識しなくてもよかった相手への気遣いも必要であろう。例えば食事の時間を避けて仕事を頼むとか、小さい子供がいる人には会議の時間帯に気をつけるとか。部下や同僚のプライベートに気配りをして仕事ができるようにならなければならない。

業務に対するスタンスも変わるだろう。人が見ていなくても成果を出すやり方が必要で、指示待ち型の仕事では余白のない世界ではパフォーマンスは発揮できない。顧客との関係も変わる。余白のない世界では顧客は本当に必要とするものやサービスしか望まない。そうなると仕事も絞られてくる。限られたコミュニケーションの中では、価値提供も無駄がそぎ落とされ、本当に品質が高いものだけが残る。

この先もしばらくは現在のような仕事のやり方がベースとなると思う。リモートワークに関する議論ではインフラやデジタルスキルが注目されがちではあるが、実は人間力の向上が重要になってくるのではないだろうか。

[日経産業新聞2020年6月12日付]

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