トヨタ社長の起業家精神
SmartTimes サムライインキュベート 代表取締役 榊原健太郎氏

2020/6/10付
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私の生まれ故郷は名古屋市。時価総額ランキングで日本トップのトヨタ自動車の本拠地だが、日常にあふれていたため特別意識したことがなかった。だがここ数年、私にとってとても気になる存在になった。豊田章男現社長が素晴らしい"アントレプレナー(起業家)"だと感じたからだ。

1974年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て2000年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にサムライインキュベートを創業。起業家への投資・育成支援や大手企業の事業創出支援を行う。

1974年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て2000年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にサムライインキュベートを創業。起業家への投資・育成支援や大手企業の事業創出支援を行う。

日常風景の1つだったトヨタをはっきり意識したのが約3年前のこと。初めてアフリカのルワンダを訪れた時、町を走っている車の大半がトヨタ車だった。日本で歴史あるものづくり企業が、遠く離れたアフリカの人々を支えている。地球全体の人類の移動を支えていることに感銘を受けた瞬間だった。

豊田氏が社長に就任したのは2009年。前年に私もサムライインキュベートを設立したため、同じ時代にリーダーとして会社を引っ張ることになった。もっとも、トヨタグループの従業員数は37万人を超えており、背負っている企業体のレベルは全く異なる。

アントレプレナーとは一般的に、新規事業などの開発に高い意欲を持ち、リスクに対して果敢に取り組んでいく姿勢がある人などを指す。私は特にそのリスクに注目していて、人が避けたいと思うことでも世の中のためになることに率先してリーダーシップをとれる人のことだと考えている。私は数年前まで、大手企業の社長よりスタートアップの起業家の方がアントレプレナーだと思っていたが、豊田氏の様々な活動を拝見してから考えが一変した。

大規模なリコール問題にリーマン・ショック、東日本大震災など想像を絶するほどの責任を抱えプレッシャーを乗り越えてきたはずだ。豊田氏は20年3月期の決算発表でも「過去に時間を使うのは私の代で最後にしたい。未来に向けた種まきだけはしておきたい」と話している。この信念からもまさにアントレプレナーシップある社長である。

ところで、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて人々の移動が大きく減った期間、地球環境がどれほど改善されたかお気づきだろうか。大気汚染の激しかった世界7都市で改善が見られ、インドでは約30年ぶりにヒマラヤ山脈が眺望できるようになったそうだ。観光大国のタイではゴミが減ってジュゴンの大群やウミガメの産卵が見られるようになった。

豊田氏もこの危機を受けて「地球とともに、社会とともに全てのステークホルダーとともに生きていく。」と話しているが、私も同じ信念を持っている。これは未来を創造する上でアントレプレナーには欠かせない意識だ。私はこれからも大手企業のアントレプレナーや起業家を発掘、支援し続け、大手企業とスタートアップの両輪を動かし世界に幸せを量産していきたい。その活動を通して地球全体に影響を与えてインキュベーションできるアントレプレナーでありたい。

[日経産業新聞2020年6月10日付]

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