未来への投資、今こそ
新風シリコンバレー SOZOベンチャーズ創業者 フィル・ウィックハム氏

2020/6/9付
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例年、季節の良いこの時期にはSOZOベンチャーズの投資家(LP)にシリコンバレーに集まっていただき、こちらでの最新の企業やトレンド、我々の活動などの報告を行う年次総会を開催している。今年は我々も例外ではなく、Zoomで総会を開いた。

ベンチャーキャピタリスト教育機関のカウフマンフェローズの会長。データ解析やフィンテック、クラウドなどのIT(情報技術)のスタートアップに投資するSOZOベンチャーズを2011年に設立。

ベンチャーキャピタリスト教育機関のカウフマンフェローズの会長。データ解析やフィンテック、クラウドなどのIT(情報技術)のスタートアップに投資するSOZOベンチャーズを2011年に設立。

年次総会にご参加いただいた日本を代表するような企業の経営者の多くから、「コロナ禍がファンドのパフォーマンスにあまり影響がないことに驚いた」と言われた。そもそもシリコンバレーに身を置くファンドは、未来に投資している。

そのため、既存のビジネスがコロナ禍で大きな影響を受けるなか、デジタル化やイノベーションをけん引するビジネスへの影響は少ない。リスクがゼロではないが、織り込み済みという言い方もできる。

例えば、リモートワークは叫ばれて久しく、急に出てきた話ではない。だから、我々はZoomに投資していた。データが意思決定に重要だとずっと言われてきている。だから我々はPalantirに投資していた。我々は運が良かったところもあるが、こうした例にはキリがない。

将来起こるかもしれない未来への投資が、我々のファンドの指針である。今はそれが顕著に結果の現れる時期なのかもしれない。

2020年はスタートアップには厳しい選別の時期になるだろう。この数カ月のトップベンチャーキャピタル(VC)の動きを見る限り、投資金額はそれほど変化していないが、投資件数は減少傾向が見られる。

つまり、1件あたりの投資金額が上昇しているのだ。どのVCも投資の選別を進めている。投資のリソースも有限だ。スタートアップへの支援を含めて取捨選択を進めざるを得ない。

起業家には今まで以上にリーダーシップが求められる。守りの経営と将来への攻めの経営のバランス力が必要だ。厳しい時勢だからこそ多数の競合は消えていき、次世代の市場をつかむ一部の業界リーダーだけ勝ち残る。状況の変化が激しいなかでも優れた起業家は、自分たちに何がチャンスなのか、どこを手当てしなくてはいけないのかを適切に判断する。

現在起きているのは総需要の低下ではなく、需要のシフトである。企業が等しく影響を受けるわけではない。どのビジネスに影響を受けているのか、危機プランが機能しているのかなどに気を配る必要がある。淘汰が進んだ後の拡大期にどのようなポジションを確保できるか。この点で、起業家と投資家の力量が一層問われる時代ともいえる。

コロナ前もコロナ後も、根源的な企業の価値は変わらず、進むべき方向は加速されていく。デジタル化の加速は間違いない。だが、未来を先取りするイノベーションは、偶然ではなく行動の積み重ねによる必然で創られていくものなのだ。

コロナ禍でもデジタル化を緩めず、イノベーションの芽を育てるシリコンバレーは魅力にあふれている。そんな環境に身を置くのは、未来を切り開くベンチャーキャピタリスト冥利に尽きる。

[日経産業新聞2020年6月9日付]

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