春秋

2020/6/8付
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夏の山形をめぐった松尾芭蕉は「おくのほそ道」に、いくつもの名句を残している。「閑(しずか)さや岩にしみ入る蝉(せみ)の声」をはじめ、「五月雨をあつめて早し最上川」、さらには出羽三山を歩き「涼しさやほの三か月の羽黒山」とも詠んだ。ベストシーズンを満喫したらしい。

▼雪深い地の短くも美しい季節の風情は、今も変わらぬことであろう。折しも7日と8日は本来なら東京五輪の聖火リレーが山形県内をまわる予定だった。芭蕉の立ち寄り先も含まれ、サクランボの産地、東根市や将棋の駒の生産で有名な天童市などを経由。次のリレーがある秋田県との境、酒田市でゴールするはずだった。

▼来年の実現にぜひこぎ着けたいところだが、ここへ来て、五輪の簡素化が検討されているという。新型コロナウイルスの影響から、開会式での入場行進をやめ、観客席を減らすといった案に加え、聖火リレーの日程短縮も視野にあるようだ。世界が未知の感染症と戦う中、開催への共感を得るため必要な措置かもしれない。

▼五輪のムードも盛り上げつつ、観客や選手の感染防止を図るには、かなりの知恵や工夫が求められる。式典の進行、競技の実施、観客の動員といった場面で「ここまで削っても大丈夫」というあんばいで「十七文字」を見いだす作業が本格化するわけだろう。険しいはずだが、ぜひとも歩き抜いてほしい「ほそ道」である。

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