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家具通販「ウェイフェア」躍進 在庫持たず販促・配送に特化

奔流eビジネス (スクラムベンチャーズ マーケティングVP 三浦茜氏)

NIKKEI MJ

家具の電子商取引(EC)を手掛けるウェイフェアが新型コロナウイルス禍で大きく売り上げを伸ばしている。長引く巣ごもり生活でホームグッズの需要が高まっているからだが、それだけではない。仕入れ先をネットワーク化して在庫を持たず、マーケティングと配送に特化したビジネスモデルに強みがある。

ウェイフェアは2002年の創業で、当初はニッチな270ものECを運営していたが、11年にホームグッズの総合サイトに脱皮。14年にニューヨーク株式市場に上場を果たした。コロナショックで3月に20ドル台まで落ち込んだ株価は5月に一時190ドル台に急騰。長引く巣ごもりでホームグッズをネット通販するウェイフェアに注目が集まった。実店舗の家具店が営業できず、最大のライバルである米アマゾン・ドット・コムが生活必需品を優先配送していた点も追い風となった。

ウェイフェアは家具に加え家電、台所用品、寝具、アウトドア用品、ペット用品、ベビー&キッズ用品などホームグッズ全般を扱う。「ウェイフェア」と言う社名と同じサイト以外にもハイエンドな層をターゲットに4つのサイトを運営。全体で1800万点を超える商品を扱うが、実はほとんど在庫を持っていない。年商に対する在庫の比率はたった0.5%だ。

1万2000の仕入れ先をネットワークし、注文が入ってから商品を調達する「ドロップシッピングモデル」を採用している。その分、マーケティングに特化し、顧客のネットでの買い物の不安を解消する施策をとことん追求するほか、自前の物流網の整備に力を入れている。

家具の購入は電化製品などと違い、型番を検索して安いものを買うのではなく、複数の選択肢を見た上で雰囲気を見つつ決めたいものだ。ウェイフェアならカタログを見るように部屋の雰囲気から家具を選べたり、アプリを使えば拡張現実(AR)を使って自分の家に置いて見たりすることができる。素材や色、デザイン、金額になどによる絞り込みも可能で、自分が欲しかった家具との出合いに最短で巡り会える工夫が随所に見られる。

もっともかさばる大型家具をネット通販で扱うと、配送に時間がかかったり、途中で荷物がダメージを受けたりしやすい。そこで、大型の荷物に特化して、受注から配送までをできるだけ内製化し、外部の配送業者を使うよりも速く届ける。

テレビCMやダイレクトメールだけでなく、ウェブ広告にも強い。グーグルやフェイスブック、インスタグラムなどを使うと、必ずといっていいほどウェイフェアの広告が目に入る。今のところ決算は赤字だが、リピーターが増えているので、マーケティングコストを抑えればいつでも黒字化が可能なようだ。19年は販売件数の実に53%が3回以上購入したリピーターによるものだ。平均的なリピート顧客は年間45回サイトを訪れ、4回以上購入したという。

商品を作らず、在庫も持たない家具ECというビジネスモデルは新鮮だ。ホームグッズはアパレルや家電に比べるとオンライン比率がまだ低く、成長の余地は大きい。

[日経MJ2020年6月5日付]

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