多様なライフスタイル
新風シリコンバレー WiLパートナー 小松原威氏

2020/5/26付
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日本でもリモートワークを始める人が増え、手探りながらも新しいワークスタイルが少しずつ浸透し始めている。一方で、労務管理や人事評価、セキュリティーの担保といった新たな問題も顕在化した。様々な業界や職種によってワークスタイルがどうあるべきか、議論が進み始めた。

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labsに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labsに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

だが、今、問うべきはワークスタイルの前に、一人一人のライフスタイルではないだろうか。本来、まず自分の人生にとって本当に大切な価値観や人生観を表すライフスタイルがある。それに合わせて、リモートワークといったワークスタイルを選択すべきだ。

家族との時間、人生を懸けて探求するテーマ、没頭する趣味。ライフスタイルは自分がどう生きるかという、生き方そのものだ。シリコンバレーでは自分のライフスタイルを確立している人が多いように思う。自分の好きを突き詰めるため、玄人はだしの趣味を多く持ち、自分の人生での優先順位がはっきりしている。

一人として同じスタイルはないからこそ、お互いのライフスタイルを尊重する。私がシリコンバレーで働いていた部署では、年初にいつも大きな1年間のカレンダーを張り出す。各メンバーがその1年に計画している全ての長期休暇の予定をわいわいと書き込むのが恒例だった。

2、3週間の長期休暇の度に山にこもってスキーに没頭する同僚もいたが、彼にとってその行事がどれだけ大事かを私たちは理解していた。事前に話し合い、お互いのライフスタイルを理解し、休暇がスムーズにとれるように支え合う。

また、子供が生まれても夫婦で仕事を続け、家族との時間を確保しながら自分のキャリアを突き詰める生き方をする人も多い。子供と一緒だからという理由で、在宅勤務をするのは何年も前から当たり前の風景である。生まれ育った海辺の地元で家族一緒に過ごす事が、一番の優先順位なので、基本は在宅勤務、必要な時だけ片道3時間かけて車で通勤する同僚もいた。

学校が長期休みの期間、オフィスに必ず誰かしらが子供を連れて来るため、ホワイトボードには常に子供の落書きが残っていた。時おりオフィスの卓球台を占領するが、おおむね親の隣で静かに宿題をしている。また、四半期に一度は従業員と家族が一緒に集まる「ファミリーデイ」というイベントがあり、オフィスでの催し物や、大きなBBQパーティーが開催される。

お互いが大切にしているパートナーや家族のことを知り、お互いのライフイベントと多様なスタイルを理解し合うことで、それぞれ違うワークスタイルでも不公平感は生まれなかった。

新型コロナウイルスは、自分にとって本当に大切なものが何かを考える契機ともなった。ココ・シャネルの「スタイルは不変」という言葉は有名だ。あまりにも変化の激しい時代だからこそ、ライフスタイルを見つめ直し、環境の変化に惑わされない自分の「スタイル」を確立したい。

[日経産業新聞2020年5月26日付]

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