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命を守るモノづくり

SmartTimes 社会起業大学理事長 田中勇一氏

「SAVE the LIFE(命を守るモノづくり)」という外務省と連携した途上国支援のODAプロジェクトがある。トライキッツ(東京・大田)代表の河合広介さんは同プロジェクトに「緊急災害用救命ツール」などの提供を含めたものづくり担当として参画している。本業は自動車用をはじめとするカーボン素材を使った製品の製造だが、新型コロナ騒動に巻き込まれ3月より売り上げが半滅しているという。

そんな河合さんに4月下旬、産業振興協会経由で1本の連絡が入った。主は新型コロナに感染した患者を受け入れている東京都大田区の大森赤十字病院だった。「御社でフェイスシールドを一日でも早く作っていただけないだろうか」という問い合わせだった。医療現場の最前線では物資不足が深刻な問題となっており、顔への飛沫を防ぐフェイスシールドもそのひとつ。在庫がなく同じ製品を自分で拭いて何日も使用したり、一般のゴーグルを使用したりするなど危険極まりない状況が続いている。

大田区生まれの河合さん。くしくも自分が産声をあげた病院からの突然の依頼だったこともあり「これも何かの縁、やるしかない」と快諾。発注を受け1週間で500個を納品した。非常に喜ばれたことから様々なタイプのフェイスシールドの増産を即決しゴールデンウイーク明けには新たに2500個を納品した。

今後は、休業している地元の飲食店従業員などから製作の協力を得ながら増産体制を確保していく。町工場で有名な大田区には、車1台つくれてしまうほどの「小規模製造業ネットワーク」がある。横の連携は慣れたもので、ここぞというときの一体感は大田区ならではだ。

この活動がたまたまテレビで紹介されると全国からリクエストが相次いだ。「国の支援は大規模な施設が優先されこちらには回ってこない」「調達したくてもその方法がわからず仕方なく自作している」。悲痛な声に中小企業ならではのスピーディーできめ細かい対応で粉骨砕身している。

行動はこれにとどまらない。河合さんは私が副会長をつとめる公益資本主義推進協議会の東京支部メンバー。同じ志を持つ全国の会員経営者に対してフェイスシールドの必要性をSNSで呼び掛けている。河合さんの社会貢献事業は今に始まったことではない。日本には働きたくても働けない障害者が現在340万人いるという。

一人でも多くの人に就労機会を与えようと本業のカーボン製品を障害者就労支援事業所に生産委託したり、売り上げの10%をカンボジアなど途上国の教育支援を行っている公益財団法人シーセフに寄付したりしている。自社、取引先、社会の三方よし経営を実践する河合さんの「SAVE the LIFE」事業はこれからも続く。

[日経産業新聞2020年5月25日付]

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