春秋

春秋
2020/5/22付
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焼け跡に闇市が並ぶ東京。終戦後の混沌たる世相を背景に、坊や哲、ドサ健、上州虎、出目徳といった面々が日夜、知恵と勘の勝負に挑む――。といえば、阿佐田哲也さんの小説「麻雀放浪記」である。モノクロで撮られた往年の映画化作品も、もの悲しく美しかった。

▼現代ニッポンのこの人たちは、どんな気分で卓を囲んでいたのだろう。黒川弘務・東京高検検事長、産経新聞のA記者とB記者、朝日新聞の元記者というメンツだ。A記者の自宅をジャン荘がわりに、コロナ緊急事態もなんのその、宵の口から未明まで賭けマージャンに興じていたという。唾棄すべき光景というほかない。

▼黒川検事長といえば、定年延長問題のまさしく当事者である。渦中のその人を、私宅に招き入れてのロンチーポンとは神経が太い。こんな検察官は一握り、こういう記者も一握りだと小欄としては言いたいが、世間は権力とメディアとの癒着の図式に大いに憤慨していよう。自戒をこめてこれを書きつつ、無念が募るのだ。

▼それにしても「週刊文春」が報じたこの不祥事の、なんと奇怪なことか。検事長の驚くべきワキの甘さが浮かび、特別扱いしたこと自体のゆがみは露呈した。しかし一方で、政治が検察を抑える口実に使われぬとも限らず、ひどく入り組んだ筋立てに見える。ドサ健や出目徳の出てくる物語のような余韻は、どこにもない。

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