朝井まかて「秘密の花壇」(112)

朝井まかて「秘密の花壇」
2020/5/22付
情報元
日本経済新聞 夕刊
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その他

五章 本屋奉公 19

話題にされず売れずという成り行きは、作者にとって辛いものだ。淋(さみ)しいものだ。

だが一喜一憂していては身が保(も)たないことも、知った。世に放ったものの行方に目を凝らす暇があれば、次作に賭ける。いつも今が正念場と、毎夜、暗い物置部屋で万丈(ばんじょう)の気を吐く。

また客が訪れた。町家の母親と娘の二人連れで、供の丁稚が一人だ。

「いらっしゃいませ」

皆の声に合わせて、興邦…

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