今こそベンチャー投資を
新風シリコンバレー WiL共同創業者兼CEO 伊佐山元氏

2020/5/19付
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シリコンバレーでもコロナとの戦いが続いている。長引く外出禁止にいら立つ中小企業経営者や一般市民。政府の中小企業救済融資も期待が大きかったが、資金の必要のない優良企業や私立大学などで使い果たし、必要としている企業に資金が回らない大失態となった。思うように減少しないコロナの被害者数や失業のニュースを受け、社会全体が不安定になっている。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

2カ月以上の「軟禁生活」で蓄積されたストレスによる家庭内暴力や犯罪、そして自殺の増加は、人間の精神的な限界を露呈した。2月には3.5%と言う米国史上最低レベルの失業率も、4月には14.7%まで跳ね上がり、夏の終わりには30%を超える勢いだ。

シリコンバレーの代表的なユニコーン企業である、民泊のエアビーアンドビーは従業員数の25%、ライドシェアのウーバーは14%のリストラを実施した。あきらかにコロナによって世界は変わってしまった。

他方、社会のデジタルトランスフォメーションは劇的に加速した。リモートワークは、多くのクラウドソフトウエアの導入により当たり前になった。オンラインビデオ会議のズームを使わない日はない。ズームのユーザーは2019年末で1000万人程度だったのが、今では3億人を超えると言う。グーグルやフェイスブックなどは21年までの在宅勤務奨励を発表し、ますますデジタル技術は重用され、進化するであろう。

市民も引きこもり生活が長引くにつれ、購買は大半がeコマース、学校は動画配信に切り替わった。食事も出前や配達サービスに、健康維持や娯楽までもオンラインサービスに移った。

「Crisis Leads to Innovation」(危機がイノベーションを起こす)と言う事実は、シリコンバレーの長い歴史が証明している。08年の金融危機では、既存の金融機関やシステムの欠陥を露呈した一方で、世界中のフィンテックブームのきっかけとなった。

実際、フィンテックベンチャーへの投資額は08年には1200億円程度であったが、18年には7兆円弱にまで増えた。10年で5600%の成長だ。コロナ危機でも、既存のヘルスケアシステムの限界や、アナログな行政や企業の不備が明らかになった。まさに、ベンチャーが大きな社会変革に取り組む好機である。

コロナによる不況の長期化を懸念する大企業の90%は、ベンチャー投資を減らすと明言している。恐らく研究開発費も削減するだろう。政府も既存企業の救済と雇用の維持が最優先課題になるとみられる。その規模は数十兆円、国内総生産(GDP)の10%以上だ。

他方、年間2000億程度(19年度)の国内ベンチャー投資が、メルカリラクスルなど、最近の大型ベンチャーを生み出した。その効果は歴然としている。

今の財政状況では大量の資金で大きな成長を生み出す従来型の産業政策は難しい。だからこそ、ベンチャーやイノベーションを振興する投資を進めて欲しい。小さな投資で大きな果実を得る可能性を秘めている。

[日経産業新聞2020年5月19日付]

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