ネット越しのプレゼン術
SmartTimes iU情報経営イノベーション専門職大学教授 久米信行氏

コラム(ビジネス)
2020/5/18付
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今春開学したiU情報経営イノベーション専門職大学で教授職を拝命した。だが、新型コロナウイルスの影響でまだ学生と一度も顔を合わせていない。誰もいない教室からこれまで6回、無観客オンライン講義のきょうべんを執った。

1963年東京都墨田区生まれ。国産Tシャツメーカー久米繊維工業の三代目(現相談役)。ICTと英語活用で起業を目指すiU情報経営イノベーション専門職大学教授。多摩大学客員教授。明治大学講師

1963年東京都墨田区生まれ。国産Tシャツメーカー久米繊維工業の三代目(現相談役)。ICTと英語活用で起業を目指すiU情報経営イノベーション専門職大学教授。多摩大学客員教授。明治大学講師

面識のある人たちと少人数で開くオンライン会議は、意外に違和感がなく効率的だ。しかし、初対面で信頼関係がない不特定多数となると話は別。いかにそれが難しく、心身ともに消耗するかを痛感した。

私もまだ試行錯誤だが、オンラインプレゼンや研修での心得と技を伝えたい。

まずは特別な孤独に打ち勝つ精神が必要だ。初対面でネットの向こうにいる聴衆の多くは、顔出しもせず名前だけが表示されたパネル越しにあなたの前にたたずむ。数百人の前で話す緊張感とも違う特別なパニック状態に陥るはず。ちゃんと聞いているか? ウケているか? 反応が全くわからないからだ。

だから誰もいないのに声が大きくなる。そのため講義後に燃え尽きて疲れ果てる。そこで慣れるまでは無観客ではなく目の前に数名の知人を呼んで目の前にいてもらおう。仲間に語り掛けるようにすれば気が楽である。うなずいたり笑ったりしてくれる人がいるだけで盛り上がる。

次に聴く側の気持ちになってみよう。学生にオンラインで意見を聞いたが手を動かさず一方的に聞くだけでは疲れてしまうそうだ。プレゼン資料の画面を見つめながら、延々と1時間半も聴き続けるのは苦行そのもの。だから内容10~15分ごとに小分けにして、質疑応答や参加型ワークショップの時間を挟みたい。

かといって「質問がある人は?」と尋ねても、手を挙げてくれる人はまれだろう。オンライン中に割り込んで発言するには相当な勇気がいるからだ。ましてや最初の質問が高度だと次に続くのも難しい。誰か一人を皮切りにありがちで親しみやすい質問をしてくれれば、その後は続々と手が挙がるから不思議だ。

質問があれば随時チャットに書きこんでと、冒頭でお願いするのもいいだろう。名前の表示を嫌う人もいるが、顔出し声出しが苦手な人はチャットを選ぶ。だが慣れないうちは講師がチャットを眺めて良い質問を即座に選んで答えるのは難しい。私も最初は余裕がなく、質問の時間になったら事前に選んだ質問を仲間に読み上げてもらっていた。

講演後のアンケートで質問を受け付け、その回答をネットでまとめて公開するのもオススメ。その場での質問をためらう人は多い。誰かが聞きたい質問は大多数の理解を深めるのに役立つ。このようにネット越しに不特定多数の心をつかむプレゼンが今後重要になるだろう。一騎当千のオンライン弁士こそAIに仕事を奪われない職種と考えスキルを磨いていきたい。

[日経産業新聞2020年5月18日付]

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