再生エネ、企業頼みから脱却 地域主体で「地産地消」推進を
Earth新潮流

2020/5/15付
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再生可能エネルギーを活用し、地域のエネルギー需要を賄う「地産地消」が曲がり角に差し掛かっている。再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)を追い風に順調に伸びてきたが、けん引役だった太陽光発電の普及が頭打ちになり、新型コロナウイルス流行の長期化で投資意欲の減退も懸念される。企業頼みの導入に頼るだけでなく、地域の主体的な取り組みが求められている。

青森県六ケ所村は再生エネの供給が電力需要を上回る(同村の風力発電所)

青森県六ケ所村は再生エネの供給が電力需要を上回る(同村の風力発電所)

「地域の電力需要を上回る量を再生可能エネルギーで生み出している自治体は2018年度に186まで増え、全市町村の1割を超えた」

千葉大学の倉阪秀史教授らが4月に公表した「永続地帯報告書」の19年度版はこう指摘した。倉阪教授はNPO法人環境エネルギー政策研究所(東京)と共同で全国の自治体の再生エネの導入状況を分析。07年から毎年公表してきた。

報告は自治体ごとに太陽光や太陽熱、風力、バイオマス(生物資源)、地熱、小水力の発電設備容量を調べ、稼働率から電力や熱の供給量を推計。これを各自治体の民生、農林水産業用の電力・熱需要と比べる。再生エネの電力供給が需要を上回れば「電力永続地帯」、熱を含めて需要量以上なら「エネルギー永続地帯」とみなす。

域内でつくった電気は必ずしも域内で消費するわけではないので、厳密にいえば地産地消とは異なる。ただエネルギー自給率が高ければ産業や雇用を生み出し、地域の経済的な自立へ道筋がつくため地産地消の理念と共通する。報告では各自治体の食料自給率も調べ、エネルギーと両方を自給できれば「永続地帯市町村」と名付けている。

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18年度は新たに栃木県塩谷町、岡山県瀬戸内市、和歌山県印南町などが電力自給率100%以上を達成。11年度に84だった電力永続地帯は7年間でほぼ倍増した。市町村別ランキングでは地熱発電所がある大分県九重町が域内需要の21.3倍を供給してトップ。熊本県五木村、長野県大鹿村などが上位に名を連ねる。

この10年足らずで電力永続地帯が増えた原動力は太陽光発電の急増だ。09年度から家庭、12年度には事業用発電による電気を通常の電力価格より高く買い取るFITが始動。永続地帯報告書でも18年度の太陽光発電量は11年度に比べて12倍以上に増え、再生エネによる電力・熱供給の半分以上を占めている。

この流れは企業に依存してきた部分が大きい。大規模太陽光発電所(メガソーラー)の立地は日照条件や用地確保のしやすさ、送電網の有無などを考慮し、企業の経営判断で決まる。風力や小水力発電などでも、企業が高い収益性を見込める場所を選ぶことが多い。

しかし、それが岐路に立っている。太陽光発電はFITによる買い取り価格が下がってメリットが薄れ、頭打ち感が出ている。長い目で再生エネを育てようと、導入目標や支援策のある自治体も少ない。

倉阪教授は永続地帯報告と合わせ、11年度から全国の自治体を対象に再生エネの取り組み状況を調べている。19年度調査では全市区町村の約8割に当たる1391自治体から回答を得た。

再生エネの導入目標を定めているのは4分の1にすぎず、人口3万人未満だと1割強に下がる。目標がない自治体のうち策定を検討・予定しているのも1割程度。再生エネ設備の導入に補助制度がある自治体も5割以下だ。理由として財源や人手、知見・経験の不足を挙げる自治体が多い。

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コロナ禍の影響も懸念される。太陽光発電の急増でピーク時に電力供給が需要を上回る恐れがあり、出力抑制が検討されている。これに経済活動の停滞が重なると出力抑制の頻度が高くなり、再生エネ投資にブレーキがかかる可能性もある。

倉阪教授は「企業主体の再生エネ導入には限界がある。地域をずっと存続させるという発想で再生エネを開発する方向にかじを切る必要がある」と訴える。

地産地消を持続的に広げるには何が必要か。

政府は中長期の環境保全の指針である「環境基本計画」を18年に改定し、「地域循環共生圏」づくりを目標に掲げた。地球温暖化防止のためのパリ協定や国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を意識し、資源の有効利用や廃棄物リサイクルなどを地域主導で進めることをうたった。エネルギーの地産地消はその重要な柱だ。

エネルギー利用の基本指針であるエネルギー基本計画などもこれに歩調を合わせ、自治体が再生エネ導入に積極的に取り組める制度や環境づくりが必要になる。

いまのエネルギー基本計画は再生エネを「主力電源」と位置づけ、30年に国内の電力需要の22~24%を賄うとした。だが原子力発電など大規模発電所から大都市へ電気を送る集中型の発送電モデルに縛られ、再生エネのような分散型電源による供給体制への移行は遅れている。

まず政府が再生エネの導入目標を引き上げ、分散型の発電・利用をどう進めるか基本戦略を示す必要がある。自治体が中長期の目標を定めるうえでもそれが欠かせない。

多くの自治体は再生エネ導入にかかわる経験やノウハウが乏しく、人材も不足している。国が政策づくりに役立つ情報分析ツールなどを提供することも大事だ。

小水力やバイオマス発電では、地元自治体が企業や市民団体などと組んで事業を進める試みもある。こうした共同事業方式を官民が後押しするのも一案だろう。

(編集委員 久保田啓介)

[日経産業新聞2020年5月15日付]

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