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春秋

スーパーに手ごろな値で刺し身用のブリが並んでいた。さっそく買って、冬場のよりも白みがかった一切れを口にする。上品な脂がほどよく乗り、おいしい。きのうの本紙にも「夏ブリ異例の漁獲好調」との記事があった。千葉県など太平洋側でよくとれているようだ。

▼時ならぬ豊漁のめぐみに加えて、近ごろは、これまで値が張って手を出しにくかった魚介類も求めやすくなり、鮮魚の売り場は華やかさを増した感がある。新型のコロナウイルスの感染拡大で多人数の宴会が取りやめられ、さらには飲食店からの引き合いも減って、地域のありふれた店舗にしたたり落ちてきたのであろう。

▼マダイは1サクが400円前後、煮付けにも刺し身にもできるキンメダイが1尾1000円ほど。ホンマグロだって背伸びすれば買えそうだ。漁業関係者は安値ゆえの苦境にあるに違いない。ならば、不漁で去年はなかなかお目にかかれなかったサンマやイカの分まで食べ、激減した需要を微力ながら下支えしたいものだ。

▼政府が今日にも東京都や大阪府などを除き、緊急事態宣言の解除を表明する。日常が着実に取り戻せれば、高級な魚介も本来行くべき場所へおさまるのだろう。解除後も密閉、密集、密接を避ける暮らしは続く。でも、少しだけ密になった魚さんたちとの仲は、このままにしたい気もする。疎遠になるのはちょっと寂しい。

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