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春秋

「氷雨降る一日をこもりマスク縫ふウイルス猛威の世界の隅で」(小知和弘子)。先日の日経歌壇にこんな短歌があった。人と人との接触を抑えられた異様な日々。世界を覆う、その不条理を静かに詠んだ歌が胸を打つ。三十(みそ)一(ひと)文字の文芸の、なんとしたたかなことか。

▼いま新聞などの歌壇俳壇には、この歴史的厄災にまつわる投稿が殺到している。とりわけ短歌は時代を映しやすいから、どのメディアでも「コロナ詠」が全盛だ。「長嶋茂雄(ながしま)さんと握手したから洗はないなつかしきかな 泡を立てつつ」(唐木よし子)。読売歌壇に載った軽やかな歌にも、一変した社会への嘆きがにじむ。

▼痛苦を生々しく詠んだ作品も多い。朝日歌壇で目を奪われた一首は「新コロナ感染者担当のミッションを『赤紙』と呼ぶ医療従事者」(木村泰崇)。しばしば戦争にたとえられるウイルスとの闘いだが、医療現場の過酷さこそ戦争そのものだと気づかせる歌である。こんどの疫病はすでに、世界で30万近い数の命を奪った。

▼それでも、明けない夜はない。イラストレーターのタナカサダユキさんが、SNSで披露した歌をご存じだろうか。「しばらくは 離れて暮らす コとロとナ つぎ逢ふ時は 君といふ字に」。漢字の「君」を分解すると、なるほど「コ」「ロ」「ナ」の3文字。みごとなユーモアのその先に、希望の灯がまたたいている。

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