新しいグローバリズム
SmartTimes PwCコンサルティングパートナー 野口功一氏

2020/5/11付
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人類はこれまで戦争、災害、経済危機など多くの危機を経験し、乗り越えてきた。その影響範囲は昔は地域に限定されていたが、グローバル化が進むにつれ拡大し、時には世界各地で同時多発的に影響を受けることも起きてきた。

イノベーションを生み出すための仕組み(プラットフォーム)づくりに従事。海外のスタートアップや大学、NPOとも連携してイノベーションの創出を戦略策定から支援している。

イノベーションを生み出すための仕組み(プラットフォーム)づくりに従事。海外のスタートアップや大学、NPOとも連携してイノベーションの創出を戦略策定から支援している。

グローバル化の定義や意味は時代と共に変わっていくが、近年では世界のつながりがより深くなっていた。現在、世界的危機となっている感染症は、過去に各地で起きたこともあったが、これほどまでに世界中の経済や社会に大きな影響を及ぼしたものはなかったのではないか。今回の事態では、近年ヒト、モノ、カネ、情報がボーダーレスかつスピーディーに世界を駆け巡っていた中で、ヒトだけが動けない状況になった。国際間のみならず、自国内でもそうなっている。

一方で、何の制限もなく世界中を動き回っているのがわずか0.1ミクロン(10の6乗分の1メートル)しかないウイルスだ。グローバル時代における過去の様々な危機において、例えば国際テロなどの脅威が多数の国に影響をもたらす例はあったが、それは重大なリスクとして認識され一定の効果ある対策は講じることができていた。しかし、ウイルスという脅威は、リスクとして認識されてはいたものの、現在のところ人類がとってきた対策をはるかにしのぐスピードで広がり、コントロールも困難で、確実に社会に顕在化してきている。

このような状況でグローバル化は一体どうなっていくのか。近年、様々な国で自国優先の機運が高まっていたが、それが一層進むのか。

一つのシナリオとしては、世界がグローバル化という考えを捨てていくことも考えられる。一方で世界の協調が進むというシナリオもある。社会も経済もグローバルから切り離すことが難しいのであれば、むしろこの危機は世界の協調によってしか解決できないのではないだろうか。ワクチン開発や検疫などの対応もお互いの研究や事例を共有すれば、スピーディーに進むだろう。また、実体経済の停滞で需給バランスが崩れ金融へのインパクトが起こるかもしれない中、国際的な協調によって経済を立て直すことが一番の近道であるかもしれない。途上国などへの人道的支援も余裕のあるなしではなく、人類全体の脅威の中で支援するというマインドで実施することにより、大きな変化が生まれるかもしれない。

そして、この事態が収まった後の世界をどうするかを新しいグローバリズムとして国際的に考えていくべきなのであろう。デジタル技術の発達によって、離れていても議論ができるインフラは整いつつある。もちろん今の混乱した状況下では自国優先になるのはやむを得ないと感じる。しかし、この危機を機会に一層の国際的協調が進むことで新しい世界ができるかもしれないとも思っている。

[日経産業新聞2020年5月11日付]

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