春秋 - 日本経済新聞
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春秋

「手段が目的化することを趣味という」――。オーディオ評論家の長岡鉄男さんが残した名言だ。世の中には、音響・映像マニアと呼ばれる人々が一定数生息する。彼らに、「いい音や画質を楽しむのなら、ライブや映画館に行けば?」と問いかけるのはご法度である。

▼好事家にとって芸術とは、アンプやプロジェクターなど好みの機器の組み合わせで成立するものなのだ。情熱が高じると、スピーカーを自作したり、音響のため部屋を改造したりする。家族にとってかなり迷惑な存在だ。でも、最近はネットで配信される音楽や映像を、スマホなどで気軽に楽しむ習慣がすっかり定着した。

▼4月初旬。東京・赤坂のホールで、ピアニストの反田恭平さんと木管楽器奏者によるコンサートがあった。チケットは1000円。と言ってもコロナウイルス禍で会場は無観客。音と映像のライブ配信だ。ジョージ・ガーシュインの名曲が流れた。感染症に苦しむニューヨーク市民への連帯だろうか。素晴らしい夜だった。

▼ライブハウスや劇場が閉鎖され、街角から文化の潤いが消えた。が、この連休中、想田和弘監督の映画「精神0」の有料配信が始まった。こうした取り組みを応援したい。どうせならいい音で楽しみたいものだ。最近はネット配信の作品を高音質で再現するアンプもある。試してみようか。これは正当な手段と目的だろう。

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