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起業家の決断力、今こそ

SmartTimes BEENEXT ファウンダー・マネージングパートナー 佐藤輝英氏

新型コロナウイルスのショックは、3月上旬あたりから東南アジア諸国やインドでも次第に広がっていった。

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

インドでは3月25日に全土でロックダウンが発表され、13億人の国民全員に即日、原則外出禁止が義務付けられた。全速力で走っていた巨大国家が急激な一時停止を促されたため、全土で大きな混乱が出た。仕事を失い生活に困窮した労働者が都市部から故郷まで歩いて帰るケースが相次ぎ、失業率は一気に23%ほどにまで急騰したという調査結果も出ている。

他方、インド政府はロックダウン発表当日に初診を含めたオンライン診療を正式に解禁したり、商工省の「スタートアップ・インディア」や技術開発庁では、新型コロナ対策に有用な技術やソリューションの公募を始めた。また、インドで活動するベンチャーキャピタルや起業家が中心となって「Action Covid-19Team(ACT)Grants」という寄付ファンドを組成。新型コロナの感染を抑える技術や、ワクチンなどのテスト環境の整備、ヘルスケア従事者への支援など国民がイノベーションで対処する動きも生まれている。

当社も微力ながらこの活動に参加しているが、現地の仲間たちが立場や利害を超え、寝る間を惜しんで協力を続ける姿には本当に勇気づけられる思いだ。

スタートアップの世界では、売り上げに急ブレーキがかかる企業がある一方、医療、教育、食品宅配などの分野では急激なオンラインシフトが起きている。また、ほぼ全ての業種で大きなデジタルシフトが起きている。コロナショックは、社会の景色を大きく変えることは間違いない。

短期の危機と中長期の機会が一度に訪れている印象だ。今こそ起業家に寄り添い、その奮闘を支え、知恵を絞り、イノベーションへの動きが止まらないように努力する必要がある。感染拡大とともに毎日数えきれないほど起業家からの相談がくる。

各国の投資先企業のナレッジ共有を進めるため国境を超えたオンライン起業家キャンプを実施したり、業種、国ごとのオンラインコミュニティーを形成し起業家同士がつながったり、学び合い実行しあっていくことを促したり――。自分たちが今できることに全力を尽くしている。

この嵐が去った後、特に新興国では極端なデジタルリープフロッグ(段階的な進化ではなく、途中の段階を飛び越して一気に最先端の技術に到達してしまう現象)を目の当たりにする気がする。その世界を見るためにも嵐の最中に起きて、嵐の後に拡大していく「新しい顧客ニーズ」に目を向ける時だ。自らの戦略、ポジショニングや機能をもう一度見直し、再定義することが重要だ。起業家の変化対応力と果断な決断力が今ほど求められる時はない。

[日経産業新聞2020年5月1日付]

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