Zoom、緊急事態宣言で利用3倍 震災後のLINE拡大と類似
読み解き 今コレ!アプリ フラー最高マーケティング責任者・杉山信弘氏

2020/4/29付
保存
共有
印刷
その他

NIKKEI MJ

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言で、日常生活は様変わりした。オフィスワーカーにとって最も影響が大きかったのは、在宅勤務ではないだろうか。会議や商談は急速にオンラインに置き換わっている。

フラー(千葉県柏市)のアプリ分析ツール「AppApe(アップエイプ)」によると、7日の緊急事態宣言以降、オンライン会議アプリの利用者数が増加していることがわかった。米マイクロソフトが提供しているスカイプとチームズ、米グーグルが提供しているハングアウト、そして米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズのZoom(ズーム)の日間利用者数(DAU)は全て増加基調にある。

なかでも顕著な増加が見られたのは、チームズとズームだ。緊急事態宣言前日の6日から2週間でチームズに関してはDAUを約2.5倍に伸ばし、ハングアウトを抜いた。ズームに至っては約3倍になっている。

劇的な成長を遂げている両サービスだが、成長の要因は異なるようだ。カギとなるのが平日と休日の利用差。緊急事態宣言以降、チームズは休日になると利用者数が平日比で5割程度に落ち込むのに対し、ズームは平日の8割程度を保っている。

チームズに関してはビジネス利用が中心だろう。マイクロソフトの「マイクロソフト365」を導入している多くの企業が、テレワークへの移行に伴い本格的にチームズの活用を始めたと考えられる。マイクロソフト365はエクセルやパワーポイントなどのツールが使えること、データセンターが国内にあることなどから、官公庁や日系の大企業で広く導入されている。緊急事態宣言後にテレワークに移行した大企業が増えたことが、6日以降の利用者急増の要因と言えるだろう。

一方、ズームは平日・休日問わず一定の利用を維持していることから、オフィスワーカーではないユーザーを獲得していることになる。キーワードは「ズーム飲み」だ。

外出自粛や飲食店の休業に伴い、若年層を中心に友人同士でビデオチャットを通じて雑談しながら自宅で飲食・飲酒を楽しむズーム飲みが流行している。無料で誰でもアカウントが作成でき、アカウント不要で参加が可能、スマホの電波でも安定したビデオ通話ができるといった仕様がマッチし、コミュニケーションツールとしてズームの評価が高まっている。

この現象は2011年の東日本大震災後に、LINEの利用が広がったことと似ている。LINEは大震災で家族・友人と連絡が取れなくなってしまったという経験がきっかけで生まれたアプリだ。混み合ってしまい使えない電話や、友人同士でもなかなか交換をしないメールとは違ったコミュニケーションを生むきっかけになった。

スタンプを利用した軽やかな会話は、人とつながっている安心感を生んだ。今回、新型コロナ感染拡大という未曽有の「大災害」に対しても、かつて電話やメールがLINEに置き換わったように、対面から複数人でのビデオチャットという新たなコミュニケーション手段が確立するかもしれない。

[日経MJ2020年4月29日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]