人脈文化 綻びの危機
新風シリコンバレー 米インタートラストテクノロジーズマネジャー フィル・キーズ氏

2020/4/28付
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シリコンバレーのビジネス文化は、他のビジネス文化と同じように「人脈」が重要だ。「ネットワーキング」(多数の人々と会って、人脈を作成)という言葉は、シリコンバレーで生まれていないかもしれないが、ネットワーキングは文化に浸透している。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

他の地域に比べて、シリコンバレーの人たちは、情報交換で比較的にオープンだ。変化が激しいテクノロジー業界において、ネットワーキングは技術のトレンドにフォローしたり、次のホットな企業に就職したりするのに欠かせない。1日にドライブしながら色々な人と話し合えるシリコンバレーの地理的な構造が、この文化を醸成した。

しかし、まだまだ広がっている新型コロナウイルスの危機で、シリコンバレーの伝統的なネットワーキング文化が生き残れるかどうかに疑問がある。

シリコンバレーで自宅にできるだけ外に行かないよう命令があった2020年3月16日、多数の人々が集まるのがしばらく無理だと明確になった。命令が下った直後、ネットワーキング文化が綻びる危険性の兆しが表れた。

まず、35年の歴史を持つ非営利団体「Churchill Club」が活動を中止すると発表した。同団体は将来の技術トレンドやその影響を検証するイベントをこれまでに多数開催してきた。テクノロジー業界の著名なトップをステージに招いたことで知られるが、今後の動静は現時点でわかっていない。

ネットワーキング危機の深さを示したのは、O'Reilly Media社が物理的なイベントを開催するビジネスから撤退して、仮想イベントのみに注力するという発表だった。同社はコンテンツやイベントなどの活動を通じ、1980年代からシリコンバレーのコンピューティング技術者とビジネス界の重要な橋の役割を果たしていた。例えば、同社の活動は、「オープンソース」や「Web 2.0」という発想の普及に貢献をした。

筆者が参加した00年代のイベントで、米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が歩き回っていた。招待状のみで参加できた「FOO(Friends of O'Reilly) Camp」というイベントが特に有名だった。参加者がキャンピングしながら講演やパーティーなどに参加した。

O'Reilly Media社開催イベントの特徴のひとつは、参加者の間に交流を進める要素を積極的に入り込んだ。それゆえ、仮想イベントへのシフトにはとても驚いた。ビジネスが不安定という理由があっただろうが、もう一つの考えがある。

それはインターネットの存在が当たり前と思う世代がビジネス界で多くなった。この世代は以前の世代より仮想的な交流に慣れている。従って、物理イベントに頼るビジネスモデルは、将来性がないと見込んだのかもしれない。この仮説が正しい場合、シリコンバレーのビジネス文化に今後、大きな変化を招くだろう。

[日経産業新聞2020年4月28日付]

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