春秋

2020/4/25付
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何年か前の夏、北海道の知床半島を横断する国道を車で通った時のことである。案内の方が教えてくれた。「この道は毎年11月初めから翌年4月下旬まで雪で通れなくなるんですよ」。緑にたたずむ山の連なりや北方領土の国後島を望む峠に立ち、冬の厳しさを思った。

▼道路のようすを知らせるホームページを見ると、今年も連休前に除雪はほぼ終わっている。だが、管理事務所は「今期は開通の日を発表しません」とのこと。車や人が集まるのを避けたいようだ。遠方への移動の自粛が呼びかけられて、ホテルも軒並み休業中。新型のウイルスで観光シーズンの幕開けは様変わりであろう。

▼寒さがゆるみ、花が競うように咲く中で北国は春を迎えている。しかし、滝やせせらぎで名高い渓流では散策を控えるよう自治体が要請、リアス式海岸をめぐる遊覧船も運航をやめている。収束までの時間が長引けば、地方経済の傷はどんどん深く、広くなるに違いない。声をすくい、早めに手当てすることが大切になる。

▼昨日も東京都では160人超の感染が報告され、地方でも勢いはおさまらない。政府は人と人との接触の8割減を求め、小池百合子都知事も連休を「ステイホーム週間」とするよう呼びかけた。都市の自制が、ふるさとの苦境をも救うはずだ。協力を惜しみたくはない。ウイルスとの戦いを終盤としたい12日間が始まった。

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