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春秋

男はある日、小判が詰まった大きな財布を拾う。行商をやめ、仲間に美酒を大盤振る舞い。だが、翌朝目覚めるとその財布はない。妻は、「夢でもみたんじゃないの」。男は改心し断酒。身を粉にして働き、数年後に念願の店を構える。古典落語の名作「芝浜」である。

▼夫が自堕落になるのを案じた妻が、ひと芝居打ったのだ。財布は奉行所に届けた。持ち主は現れず、お金は後日、自分たちのものに。しかし、臨時収入には手をつけず、「心の支え」にして自力で借金を完済した。見上げた賢妻だ。いま、この落語に最も共感しているのは、国の財布を預かる財務省のお役人かもしれない。

▼政府はコロナウイルス禍による減収世帯に30万円を支給する予算案を組み替え、国民に一律10万円を配るという。同時に、7都府県を対象にした緊急事態宣言を全国に広げた。「困っている人を救済する」という政策目的が、「感染拡大防止の協力金」に変わったような印象だ。給付規模は12兆円。当初案の3倍に膨らむ。

▼赤字国債を発行する。ある与党の議員がネット上で、積極財政を正当化する「現代貨幣理論(MMT)」に触れ、「理論が容認された」と発言していた。独自の見解だとは思う。だが、財政当局は心配だろう。心ある民は、10万円を「心の支え」とわきまえ、国に辞退を。芝浜の賢妻に学ぼう。なんて、呼びかけたりして。

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