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生産性「逆もまた真なり」

SmartTimes WAmazing代表取締役社長CEO 加藤史子氏

「急遽、明日からリモートワークになることが決まったため打ち合わせをキャンセルさせてください」。初めての打ち合わせを予定していた都内の顧客から連絡が入った。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言が出る少し前、3月下旬のことだ。

その連絡が来る前、既に原則リモート体制だった当社は「オンライン会議でお願いします」と持ち掛けたが、先方は「いえ。初回なので是非、対面で行いたいのです」という返事。交渉したが「なんとしても対面で」という回答は変わらなかった。そうこうするうちに政府の非常事態宣言が発令され、打ち合わせはキャンセルに。早くとも5月中旬まで延期されることになった。

残念に思うと同時に、これと真逆なことを海外企業とのやり取りで思い出した。台湾の格安航空会社、タイガーエア台湾社と提携に向けた打ち合わせを依頼した時のことだ。

こちらが台北へ訪問するという申し出は断られ「まず提案内容の資料をメールで送ってくれ」という連絡が来たのだ。そこで提案資料を作り中国語に翻訳した上で発送した。

すると、メールでの質疑応答がはじまり何往復かのやり取りの後、先方から「オンラインで打ち合わせしよう」と言われオンライン会議を開いた。その会議の最後に先方から「あなたが台北に来るタイミングで面会したい」との申し出があった。

台北にある本社を訪問すると、コスト意識の高い格安航空会社らしい質素な会議室に通された。提携はその場で決まった。私はこれこそ「訪問ばかりで実のある話が進まない日本企業が時間と労力のコストを省く方法かもしれない」と思ったものだ。

人と人が会うとなれば様々な作法が生まれる。平安時代、貴族の女性が男性と対面するときは当然に御簾(みす)越しである。しかし御簾は「すだれ」のようなものなので、内側にいる人の影が少し見えてしまう。

これを「透影」と言い、平安文学では仄(ほの)見える女房や女童などの影から中に住まう女主人の趣味や人となりを推測する描写も多い。対面しないからこそ膨らむ想像力のたまものだ。これは今のビジネスシーンにも通じる。

さて、私が有識者委員をやっているある県では少し前に不登校児の比率(を下げる)というKPI(成果指標)を廃止した。学校だけが学びの場ではないという意図である。

外出自粛要請で学校も休校となり、自宅で過ごす子供の学習やオンライン授業のサポートに奮闘する親も多いだろうが、多くの不登校の児童、生徒にとってはこれまでと学習環境は変わらないはずだ。家庭で集中して学びを得る。非常時で明らかになった「逆もまた真なり」である。

[日経産業新聞2020年4月20日付]

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