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広告危機に揺れる海外メディア 課金購読やメルマガは好調

先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

NIKKEI MJ

「全広告収入が3~4割減。リーマン・ショック以上のインパクトとなる」。グーグルで広告営業部門を率いたこともあるティム・アームストロング氏が最近、米メディアの取材にこう答えた。

メディアの広告危機はリーマン・ショック以上という声も(2008年、リーマン・ブラザーズの本社ビル)=ロイター

米国の主要ニュースサイトのアクセス数は、外出禁止の広がった3月に激増している。大手のCNBCが倍増、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストも5割増を記録した。従来なら、アクセスが増えれば広告収入が増えるのが常識だが、今回は当てはまらない。大手広告主の広告予算の執行が急停止しているのだ。

メディアがコロナ報道を増強するのに対し、広告主は深刻な記事に広告を出すのをためらっている。英国の文化相が先日「信頼できる報道に広告を出すのをためらわないように」と異例の表明を行ったほどだ。

このようなメディアの苦境下で人員削減、一時帰休、あるいは報酬カットなど暗いニュースが増えている。印刷物をあきらめたり、その頻度を下げるケースなども生じている。オーストラリアで多くの地方紙を抱えるニューズ・コープ・オーストラリアは、傘下の60紙の印刷を取りやめると発表した。

悲観材料ばかりのようだが、信頼できる報道を求める読者の意識はかつてないほど高い。これは購読課金のように、読者から直接収入を得るには大きなチャンスだ。

実際、購読課金の技術を世界300社に提供する米ピアノ社の集計では、3月の全購読者は前年同月比で6割以上も伸びたという。米老舗雑誌のアトランティックでも同月の購読申込者数が、過去の月間最高記録を大幅に塗り替えた。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

メールマガジン(メルマガ)の購読も増えている。英紙テレグラフでは3月のメルマガ購読者数が3倍近くにはねあがった。これはメディアと読者の関係を強固にする効果がある。

興味深いのは英紙ジ・アイの試みだ。ロックダウン(都市封鎖)で自宅にこもらざるをえない年配の読者を念頭に、親密に語りかけるようなスタイルのメルマガを3月から試行。読者に支持されているという。

読者と親密な関係を築くという点では、メルマガ以外の手法も出てきている。ニュースサイトの米アクシオスでは、従来の強みであるメルマガに加えて新たにアプリを投入した。メルマガ同様に読者の継続利用を期待する。同じくニュースサイトの米バズフィードは携帯電話のショートメッセージ機能を使い、記者から直接コロナ関連の情報を送信する購読型のサービスを始めた。

米国で最近「スーパーピア」という、専門家が有料でビデオ会議を使って利用者の質問に答えるサービスも誕生した。メディアへの応用例が現れそうだ。

いずれも、確かな情報に飢え、不安な毎日を送る読者に対し、従来の堅苦しい形式を捨て去り、直接語りかけるような手法を模索するものである。

読者との親しい関係を築けば、いずれ有料購読者として苦しいメディア経営を支える基盤となるはずだ。

[日経MJ2020年4月20日付]

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