相談事から広がる社会
SmartTimes 社会起業大学理事長 田中勇一氏

2020/4/17付
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「病気になっても、ならなくても、自分らしく生きられる社会をつくる」。一般社団法人CANnet(札幌市)代表理事の杉山絢子さんの思いは強い。同法人は、がんに関するあらゆることについて気軽に相談できるウェブサービス「がんコンシェルジュ」を展開している。このサービスには、医療のみならず介護、福祉、法律、美容、教育などさまざまな分野の専門家が登録されている。がん経験者とつながり、一人一人の相談に丁寧に対応してくれるのが特徴だ。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

杉山さんは23歳の時、小さな印刷会社を経営していた父親を肺がんで失った。その際、相続や葬儀の手続きなど何をしたらよいのか分からずとても不安だったが、両親の友人が専門家を紹介してくれたことで救われた体験がある。自分や家族の身にいつか起こるであろう病気を気軽に相談できる専門家がいてくれたことをとてもありがたいと思ったという。

その後、がん治療の専門医として10年ほど病院で働くものの、やはり治療だけではなく患者の人生そのものをサポートするサービスの必要性を強く感じ、副業を自ら立ち上げる決意をする。もっとも、必要なビジネススキルがないため社会起業大学に入学。北海道から東京に通学しながら、知識やノウハウを身につけるとともに、理念に共感してくれる仲間も得た。同大学主催の「ソーシャルビジネスグランプリ」でグランプリ受賞後、同志たちと2013年に立ち上げたのがCANnetだ。

主なサービス「がんコンシェルジュ」は評判を呼び、各地から注目を集めるようになった。相談者や専門家などがお互いに学び、助け合う活動拠点も開設。現在は札幌市など北海道の3拠点、東京都内の1拠点に人々が集う。

がん経験があるかつての相談者が、他の相談者のサポートをすることもある。お互いに協力し課題を解決するコミュニティが自然と生まれる好循環が出来上がるようになった。杉山さんはサービスを続ける中で、相談事を解決するには社会の仕組みや制度自体を変えていく必要もあると考え、プロジェクトも推進している。「病気になっても働ける会社を増やす」、「がんと認知症の合併問題を解決する」、「性的少数者(LGBT)当事者の病院での困りごとを減らす」などのプロジェクトだ。もはや領域はがんやコンシェルジュに限らない。

最近では新型コロナウイルス感染拡大を受け、感染症の基礎知識や予防法を学べるセミナーを医師や薬剤師と開催。社会起業家としての杉山さんの活動は、働く人たちの健康寿命の長さにも貢献している。これは、従業員の健康をコストではなく投資と考え「健康経営」を推進する公益資本主義の考え方にも合致している。今後の更なる活躍に期待したい。

[日経産業新聞2020年4月17日付]

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