コロナ危機、LNGに波及 需要減速で開発延期相次ぐ
Earth新潮流

2020/4/17付
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JERA富津火力発電所に接岸するLNG船

JERA富津火力発電所に接岸するLNG船

新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の減速の影響が、液化天然ガス(LNG)にも及んでいる。需要の急減や投資環境の悪化でプロジェクトの先送りや見直しが相次いでいる。新型コロナ危機の収束が長引けば、新興国を中心に拡大してきたLNGの導入にブレーキがかかる可能性がある。

米エクソンモービルが2020年前半に予定していた、アフリカ・モザンビークでのLNG事業の最終投資決断(FID)がずれ込む見通しになった。イタリア炭化水素公社(ENI)や中国石油天然気集団(CNPC)などと、モザンビーク北部に年産760万トンの液化プラント2系列を建設する計画が延びた。

英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは米ルイジアナ州で検討してきたレイクチャールズLNGプロジェクトから撤退する。さらにオーストラリアのエネルギー大手サントスは豪州北部で計画する天然ガス田開発のFIDを延期した。産出するガスは国際石油開発帝石やJERAなどと運営するダーウィンLNGの液化施設に供給する予定で、JERAがガス田権益も取得する予定だ。

新型コロナ危機と産油国の増産競争により原油価格が急落し、メジャー(国際石油資本)は一斉に投資の抑制に動いている。エクソンは20年の投資を100億ドル(約1兆800億円)、シェルは50億ドル(約5400億円)削減する。

メジャーだけではない。米オキシデンタル・ペトロリアムは投資削減に加えて、従業員の給与カットなど大幅な支出削減に踏み切らざるをえなくなった。米国では独立系のシェールオイルやシェールガスの生産企業に破綻する企業も出ており、多くが投資削減を迫られている。

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メジャーを含め、石油開発会社は地球温暖化対策への高まる関心を背景に、石炭や石油に比べて二酸化炭素(CO2)の排出が少ない天然ガス事業へ軸足を移しつつある。なかでも天然ガス・シフトをけん引したのは米国でのシェールガス開発だ。シェール企業はコスト耐久力を高めてきたとはいえ、1バレル20ドルを下回る原油価格では採掘の採算確保は難しい。

米南部テキサス州のシェール掘削施設=ロイター

米南部テキサス州のシェール掘削施設=ロイター

今回の原油安の前から、米国ではシェールガスの生産急増で天然ガスの指標価格(ヘンリーハブ)は低迷している。シェールガスを原料に使うLNG生産事業が次々と稼働し、アジア市場に流入。増大する供給力に需要が追いつかず、供給過剰感は強まっていた。

そこに新型コロナ・ショックが直撃した。中国では需要の急減に加え、感染の影響による受け入れ基地の操業低下を招いた。中国海洋石油(CNOOC)など国有石油会社が契約した数量を受け取れないと宣言した、との情報が広がった。インドでも同様の事態が発生した。

中国は19年、日本に次ぐ世界2位となる6000万トンのLNGを輸入。インドも2000万トン以上を輸入する。LNG需要の伸びをけん引する2カ国の減速は世界全体の需要に大きく響く。

日本エネルギー経済研究所は3月23日、新型コロナが石油・天然ガス需要に与える影響についての分析を発表した。LNGについては、新型コロナ危機がなければ20年の需要は前年比1500万トン増の3億6800万トンを見込んでいた。

感染拡大の影響が長期化した場合のシナリオでは、20年の需要は前年比400万トン減の3億4900万トンまで落ちる。

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注意が必要なのは米国のプロジェクトだ。投資環境の悪化で新規案件の着工は先送りされても、建設中の案件が少なくない。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によれば、20~21年に増加するLNG供給能力の3分の2が米国に集中する。すべて完工した場合、米国の供給力は24年に8000万トンに達し、世界最大級になる。

需要が回復しない中で、この供給力を市場は吸収できるのか。アジアに流入すれば、ますます供給はだぶつき、20年代半ばといわれてきた供給過剰の解消が一段と遠のく。LNGのスポット価格は低迷が続き、長期契約で固定された高値で買う日本の電力・ガス会社は余剰分の転売に一段と苦慮する可能性がある。

新規プラントの建設先送りや建設の中断・遅延は、エンジニアリング会社の受注や事業計画にも影響する。

今後の供給はどうなるのか。エネ研の橋本裕ガスグループマネージャーは「将来のプロジェクトに向けた投資活動の減速は既に顕在化している。投資決定済み・建設中のプロジェクトについても、従事者の安全・健康を確保しながら遂行していくことが肝要だ。資機材やサービスを確保する際の制約も出てくることから、今後のスケジュールや将来の供給能力は慎重に見極めていかなくてはならない」と指摘する。

(編集委員 松尾博文)

[日経産業新聞2020年4月17日付]

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